15回目の引越し

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恵比寿から逗子への引越しの日が近づいてきた。積みあがっている段ボール箱はまだ少々。ペン1本でも手に取るたびに思い出が蘇り、いちいち感傷に浸っているからだ。

これまで何回引越したかとカウントすると、今度で15回目! ヤドカリみたいな人生である。越す家のサイズは大きくなったり小さくなったり、それでも着実に荷物は増えていく。

一番最初の引越しは私が3歳の冬、故郷の愛媛から横浜へ移った時だ。
愛媛の家は大邸宅だった記憶がある。・・と曖昧なのは、2007年2月4日の記事「菜の花」にも書いたように、子供の目で見る道や家のサイズはとても大きく感じるからだ。

叔父たちを含め7人家族で暮らしていたが、祖父の会社が倒産。
家を捨て、祖父は大阪へ、祖母は2人の息子を連れて隣の市へと夜逃げをした。
風呂敷包みを抱えて小さな三輪トラックに乗り、涙目で手を振る祖母の姿は、今でもありありと思い浮かぶ。

銀行の支店長でありながら保証人の債務を背負った父は、新しい職を探すため、母と私の3人家族で東京行きの夜汽車に乗った。
虚ろにずっとうつむいたままの母。初めての長距離列車に大はしゃぎの私。

突然、暗い窓の外を指差して父が声を上げた。
「ほーら見てごらん。こっちの汽車とあっちの汽車が競争してるぞ。どっちが勝つかな」。
隣には薄明かりの灯った客車が、前後しながら並行して走っていた。

「頑張れ!頑張れ!」
いつの間にか母も笑顔で加わって、自分たちの列車を応援する。不安だらけなこれからの生活に期待をかけるように、3人の声は大きくなった。

横浜の廃屋に近い借家を見つけて、昼夜働きまくる父母。
やがて会社を興して、お得意様が建てた湘南の借家へ引越し。そしてまた働きまくる。

両親が初めてマイホームを購入したのは私が高校1年の時。愛媛から祖父母を呼び寄せて、12年前の賑やかな食卓が復活した。しかし祖父母が亡くなり、父も病に倒れた今では、その家も記憶の中にしか残っていない。

そして今回は、私1人だけの引越し。
都会を見降ろすコンクリートの箱から、海と森に面した癒しの場所へ移り住む。
もちろん不安は沢山あるけれど、遠い日の夜汽車のように「頑張れ!頑張れ!」と自分に言おう。

先に見えるのは明るいプラットホーム。終点のない線路など何処にもないのだから。

コメント

  1. やーさん より:

    よーっし、
    また頑張ろうぜい! ゆりさん
    およばずながら、声援を送ります。

  2. こんにちは。

    「え、えっ!」と思いながら読んでいました。

    私は、九州から東京に引越したのは9歳のころ。寝台車での移動でした。寝台二段ベッドの小さな窓から見える夜中の大阪駅。早朝に、線路がたくさんある東京駅に到着。今でも鮮明に覚えています。

    お引越しなんですね。
    ちょっと骨が折れますね。がんばってください!

  3. こまちゃん より:

    引っ越しの回数なら一昨年のが13回目かな?
    独身寮の中とか、実家との行ったり来たりが
    殆どでしたが。

    経験豊富なオネイ様にご縁があっても
    酒の席で有るが故、勉強になる話を
    「翌日には誰が相手だったのかも覚えていない」
    という朗らかな人生。w

    明日からは気をつけますから、
    是非!ご指導ご鞭撻をお願いいたします。

  4. yuris22 より:

    やーさん

    また頑張ろうぜい!って、菅原文太様みたいです。
    さすが、やーさん!

    でも知らない人がこれを読んだら、危ない人だと思うでしょうね(笑)

  5. yuris22 より:

    単身赴任のYHさん

    寝台車って、いい響きですねっ。
    静かに駅に停まるたび、どこだろうってカーテンを開けたことを思い出します。

    で、今夜もお誘いに乗って飲みに行ってしまった。
    明日は一心不乱に片付けます。

  6. yuris22 より:

    こまちゃん

    >酒の席で有るが故、勉強になる話を
    >「翌日には誰が相手だったのかも覚えていない」

    って、もしかして私の汚点を言ってます?
    でもいいや。覚えてないもんねー(爆)

  7. yuris22 より:

    皆様へ

    本音を言えばとても辛い。
    でもこうしてコメントを書き込んでくれる友人がいることは、どんな辛さも払拭できます。

    みなさん、ありがとう!!

  8. 亀吉 より:

    淋しいぜ。
    なんか、めちゃ淋しい!
    でも、頑張れ!
    ずーっと応援してるよ。

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