神様からのプレゼント

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ウェスティン東京のロビーに飾られた煌びやかなクリスマスツリー。立ち止まってカメラに収めながら、映画のワンシーンみたいな情景を思い描いた。それは子供の頃からの夢であり、今からではもう叶わない夢の情景だ。

クリスマスツリー

12月25日の早朝、私は枕元にサンタさんのプレゼントを見つけて、バリバリと包装紙を破る。箱の中にはずっと欲しかったテディベア。抱っこしてパジャマのまま部屋から駆け出すと、まだ眠っている両親のベッドに飛び乗るのだ。
「見て見て、サンタさんにもらったの!」

ひとしきりの興奮がおさまった頃、今度は階下のリビングルームに駆け下りる。何故ならクリスマスツリーの下には家族で交換し合うプレゼントが、赤や緑や金色のリボンを解かれる時を待っているからだ。
あくびしながらガウンを羽織って降りてきた両親を急かせて、幸せの儀式が始まる。
「これはパパのセーター」
「これはママのブローチ」
「これは おちびちゃんのお絵かきセット」
幾つも積まれたプレゼントはママと一緒に買いに行って中身は知っているけれど、開けた瞬間の歓声が嬉しくて、両親の顔を交互に見比べる。

残念ながら、こんなアメリカ映画みたいなクリスマスは私の過去のページにはない。でもありありと思い出す情景が一つだけある。

畳の部屋に2つ並べた布団。父は接待か愛人の元か、どうせ今夜は帰ってこない。深夜まで働きづめだった母が鏡台に向かって化粧を落としているのを、「早く寝ないとサンタさんが来ないよ!」と足をバタバタさせて怒る私。
やっと電気が消され、煙突のない家にどうやってサンタが訪れるのか目を開いて待っていたけれど、母の寝息と共にやがて私も夢の中に入ってしまった。

あくる朝、枕元に置かれたプレゼントは、千円札が1枚と「これで好きなものを買いなさい」と書かれた手紙。それが誰の文字かも気付かず、台所に立つ母に大喜びでサンタさんがやって来た報告をしに行った。
あの千円で何を買ったのか、手紙はどこに仕舞ったのか、今では遠い思い出だ。

どうか世界の淋しい子供たちに、本当のサンタさんのプレゼントが届きますように。
クリスマスツリーの下には家族のプレゼントが積まれていますように。
愛し合うパパとママが、りんごのほっぺにキスしてくれますように。

この季節が来ると願わずにはいられない夢の情景。世界中の子供たちの笑顔こそ、神様が私にくれる最高のプレゼントだ。

コメント

  1. 風小僧 より:

    yurisさん、読んでいて少ししんみりしました。
    貴女の事が分かったとは到底言えませんが、22の数字通りの人生であって欲しいと思います。
    22まであと19日です。

  2. yuris22 より:

    風小僧様

    書いた本人もしんみりしています^^;
    それでも暖かい部屋でクリスマスツリーを眺められる分、今はとても幸せです。

    私にとって12月はクリスマスと誕生日が日を接してやってくるラッキーな月。22日は嬉しいことが起きるに違いありません。

  3. 素浪人 より:

    僕は子供たちに「互いに思いやる心」を伝えたいなァ。
    少しでもね。

  4. marie より:

    クリスマスツリーが町の至る所で光始めましたね(^-^)
    クリスマスツリーは子供の頃からの夢でした。私にとって。
    祖父母に育てられ、決して裕福ではなく、クリスマスツリーも、お雛様も雲の上の存在でした。
    今では、息子の為にクリスマスツリーも買い、鯉のぼりもあります。もう、雲の上の存在じゃなくなりました。
    ほんと、時代が変われば、考えも変り、環境も変わるけど、今の子供達は昔と違い、贅沢ですよね。
    そういう私も贅沢していますが・・・(笑)

  5. T・O より:

    子供の笑顔を作るのは大人に与えられた大事な仕事、全ての子供達のクリスマスがいい思い出になる事を祈りたいです。

  6. yuris22 より:

    素浪人様

    互いに思いやる心。
    お腹がすいている時、ひとつのパンを分け合えば幸せは2倍になりますものね。
    私は歌を通してですが、子供たちの横の繋がりを応援してあげたいと思っています。

  7. yuris22 より:

    marie様

    クリスマスツリーやこいのぼりを飾れる環境にいらっしゃることが素敵です。
    体験する歳時記、季節の情操教育ですね。

  8. yuris22 より:

    T・O様

    子供はいつか親の背丈を追い越して、家を出て行く時がきます。あどけない笑顔を見られるのも限られた間。親に与えられた贅沢かもしれませんね。

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