頑張りますと言わないこと

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私たちがメールの結びに「よろしくお願いします」と書くように、テレビを見ているとアスリートのインタビューで出てくる言葉は「頑張ります!」だ。しかしイチローの口からはそれを聞いたことがない。

彼の語録に出てくる「どんな難しいプレーも当然にやってのける。これがプロであり、僕はそれにともなう努力を人に見せるつもりはありません。」が基本的なスタンス。自分でベストだと信じていることを黙々と実行しているのだから、今さら「頑張ります」とマイクに向ってアピールする必要がないのだ。

その代わり「期待するだけ期待して欲しい」が、イチローの口ぐせになっている。
「注目されることを苦しいなんて思わない。だって、注目されないと選手として終わってしまう。プレッシャーを取り除く方法? 簡単です。ヒットを打たなきゃいいんですよ」
(『イチローの流儀』小西慶三:新潮社より抜粋)

今日のレンジャース戦で、大リーグ史上初となる9シーズン連続200安打の達成。試合後のインタビューには「解放されましたね。人(の記録)との戦い、争いに終わりを迎えることができた。」と答えたという。
先週の大リーグ通算2000安打達成の時には「節目の数字であることは間違いないが、たどり着いたという感覚はない。偉大かどうかは人が決めること」と淡々と語っていたのが、
やはり人の子、期待とプレッシャーの狭間で苦しんでいたのだろう。

イチローはテレビや新聞に興味を示さず、特に野球に関する番組や記事には目を向けないという。一面に取り上げられて上機嫌になっていた慢心さに気付き、「他人の視線が気になると、自分自身を見失いやすい」と、マスコミからの情報入手をやめた。

自分がどう褒められているか、どう酷評されているか、普通なら飛びついて読みたい。しかしどんな評論家よりも正しい評価を下すのは、冷静な目で見ているもう1人の自分である。生まれた時から付き合ってきた心の声は嘘をつかない。
「比較するのは、あくまでも自分です。もちろん他人の記録も尊いと思いますけど、まずは自分の能力を競わないと・・」

私たちは「一生懸命、頑張ります」と簡単に口にするけれど、そこには他人との比較と言い訳がある。甘やかすのも自分。厳しくするのも自分。結果を出すのも自分。評価するのも自分。黙々と淡々と、イチローのバットが教えてくれたものはとても奥が深い。

コメント

  1. marie より:

    「がんばる」と言う言葉は、実はあまり良くないかもしれません。
    ある意味で曖昧な感じですし、言った以上本当に頑張った結果が出ないと、「何だ」と見る人もいますからね。
    二十歳頃に付き合った男性に私のわがままもあり振られたのですが、性格を直す為に「頑張るから」と、すがった経験があるのですが、「何を頑張るんだ」と冷めた返事をされました。
    まぁ、冷めてしまった男に何を言っても無理なんですけどね・・・。
    イチローの精神はやっぱりすごいですね。
    見習いたいですね(^-^)

  2. yuris22 より:

    marie様

    恋愛トラブルにおいての「頑張る」は、末期状態の努力かなと思います。懇願しても、白けきってる相手には通じません。
    でも、「頑張ってあきらめる」と言うのであれば逆転のチャンスありかも・・。何が悪かったかを知っている上に、退き方が爽やかですものね。言葉は使いようかと思います。

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