アルカイック・スマイルのトレーニング

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「女性の愛想笑いにご用心!? 」というネットニュースに注目が集まっている。目が合った女性がにっこりと微笑んでくれたら「脈あり」と思うのは勘違い。その微笑みは個人的好意ではなく先天的な性質だというのだ。根拠は米カリフォルニア大学の心理学者マリネラ・ファリス氏による研究結果。生後2か月の男女に対して人が話しかける実験で調査したところ、「女性は生まれながらにして相手を問わず微笑むことができる」という傾向が見られたそうだ。(web R25 8月8日(木)7時1分配信より引用)

この記事で最も引っかかったのは、無意識に生まれる微笑みに「愛想笑い」のタイトルを付けたこと。愛想笑いとは「人の機嫌を取るための笑い。おせじわらい。」であり、そこには笑う側の作為と受け取る側の疑いが交錯している。しかし何も考えていないニュートラルな精神状態でも、微笑んでいると見られる顔つきの人間だっているのだ。

先日カウンセラーたちで相互トレーニングをしていた時、悩んでいるクライアントに対して「愛想笑いは良くない」と仲間の一人に忠告された。私としては意図的に笑ったのでなく、話に頷きながら相手の表情を見ていただけなのだが、自然に口角が上がっているせいで誤解を生むようだ。

歯を見せずに口角が上がっている表情はアルカイック・スマイルと言うそうで、良くも悪くも人が寄ってくる。道に迷っている人には声をかけられやすく、酔っ払いには泣きつかれやすく、「あの人、私の方にくるかも」と思った瞬間にもう話を聞いているのだ。誰かを探していて目と目が合ったときに、「この人は自分に対して微笑んでいる」と拠り所を見つけるのだろう。

どうしてこんな表情になったのか、きっかけは物心が付くか付かない頃から始まった父のフェイストレーニング。臆病で泣き虫で引っ込み思案だった娘に、口角を両手の人差し指で引き上げては「こういう顔にならなきゃだめだよ」と口すっぱく注意を促した。鼻根が高くなるようにと指でつまむ習慣と併せて、時間をかけて成せば成るのトレーニングだったと思う。

カウンセラーとして話を聴くとき、クライアントの重くて辛い相談に対して「への字口」になることは私には出来ない。人間が大好きだから、未知なるその人を受け入れたいから、「あなただけと向かい合っています」という思いをこめて一生懸命に見つめる。その時には恋人に見せる表情と匹敵するほど、いちばんいい表情で接したいのである。

気づけば飼い猫にも笑顔で話しかけてる私。アルカイック・スマイルの行動療法は死ぬまで続き、いつかお棺に入ったときにも微笑んでいられたらいいなあと思っている。

コメント

  1. 的は逗子の素浪人 より:

    昔はよく道を尋ねられた。いつも何で僕なのかなぁと思いっていましたが、こうゆう事だったのか。
    いつしか勤めだしてから今までは減って来ている。小賢しくなって雰囲気が変わったかも知れない。
    でも、もうぼちぼち本来の自分に戻ろう、戻りたいと思う。

  2. yuris22 より:

    的は逗子の素浪人様

    そう、本来の自分でいいんですよ。自分のための人生なんですものね。

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