憂さは忘れて食欲が増える

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重たいと思われるかもしれませんが、前回の記事について結果を書きます。父に継母の死を伝えるべきかどうか、介護施設の責任者、保健師、法定代理人、家族で様々な意見が出ました。いつも父に付き添ってくれていた保健師さんは「余生をゆっくり過ごすためには何も知らせないほうがいい思います」と涙をボロボロこぼしたことに、自分がいかに至らない娘だったかを知りました。

 

皆が頭を抱え込む問題となったのは、父の場合は普通の痴呆とは違って脳の損傷による障害なので、正常な部位がどう反応するかが想像できなかったのです。大きなショックを受けて絶望の淵に立ったらどうしようかと、誰にも先が見えませんでした。しかし話し合った末に自分がもしその立場だったらと考えれば、黙っていられるよりは教えてもらった方がいいという結論に達して、ありのままを選んだのです。

 

まずは法定代理人が端的に伝えに行き、父の反応は「あそう。あそう」と穏やかであり、継母ではなく私の名前を口にしたそうです。ショックを受けていないことが分かって会いに行くと、ちょうど昼食の時間。運ばれてきた食事はご飯もハンバーグも煮物もフルーツも全てが絵の具のような液体でした。

 

急いで食べるとむせるので、「ゆっくりね」と声をかければ私の目をみて頷き「ゆっくりゆっくり」。
スプーンですくう前に口腔内のものを飲み込むように、「ごっくんね」と声をかければ、スプーンを置いて「ごっくんごっくん」。
驚いたことには以前だったら手から口へ行くまでに震えてこぼしていたのが、今は残さずちゃんと食べることができるのです。美食家で文句ばかりだったくせに、水さえも「おいしいおいしい」。終われば「お薬、お薬」。子どもがえりした父が可愛くて可哀そうで、私から継母については言えずじまいで、山のようにオーバーラップしてくる長い思い出がひとつひとつ頭上に昇っては消えていきました。

 

こんな私に限らず、辛い気持ちを抱えて悩んでいる方が沢山いらっしゃるでしょう。愛した人、憎んだ人を忘れることはできませんが、想いは昇華していきます。一昨日よりは昨日、昨日よりは今日と、食事の量が増えてきた自分がたくましく思えます。神様に五体満足を授けられたことに感謝して、明日も皆が笑顔になる良い天気でありますように。読んで戴いて本当にありがとう。

 

今日はパソコンデスクの下に、ミニ・ホットカーペットを敷きました。沢山の電源ケーブルをものともせず、すかさず与六が寝そべって、私が足を置くとカプリと噛みついてきます。馬鹿ニャンコっ!と怒りつつ、小さくても我がままな家族がいてくれるから辛いことを乗り越えていける。「私と同じ寿命でいてね」と声をかけ、やがてクークーと聞こえてきたイビキに癒されている晩秋の深夜です。

 

ホットカーペット

コメント

  1. hattorisan より:

    おはようございます、気持ちの良いお天気ですね。他人事ながらホットいたしました。
     五体満足に感謝致します、最近つくづく感じさせられます。皆が笑顔を出せますように、清く明るく過ごしていきたいと思います。

  2. yuris22 より:

    hattorisan

    ありがとうございます。日にち薬が少しずつ効いてきたようで、眠りに逃げることもなくなりました。気付けば放置してきた義務が山積みで、朝からフル稼働です。頭と体を動かせば、心も後からついてくるものですね。

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