地方都市に出張した夜のエピソード。打ち上げの後カラオケに行こうと街に繰り出す際、「おねえさんのいる店は大丈夫ですか?」と聞かれた。
ホステスさんのいるクラブやスナックは何度も行った事があり慣れている。
しかし今回はスペシャル。なんとフィリピンパブに案内されてしまったのだ。
ドアを開けた途端、むせ返るような香水の匂い。10数名のフィリピーナたちが胸の谷間もあらわに、超ミニスカートで迎えてくれる。
「オキャクサン、ドコカラキタ?」
「トーキョーカラキタヨ」
隣に座った女の子の質問に、ついこちらもカタコトで答えてしまう。
指名しなければ、20分経つと他の子にチェンジするシステム。「トーキョーカラ」を繰り返しているうちに、親しみやすい、ちょっと太めな女性が横に付いた。
彼女の名前はNIKI。日本語が上手なわけを聞くと、もう10年以上も日本に住んでいるという。今年8歳になるハーフの女の子がいるけれど、ご主人とは離婚。マザコン亭主に嫌気がさして、母子家庭でがんばる道を選んだというのだ。
子供のために本当は昼間の仕事がしたい。水商売から抜け出したい。
しかしハローワークに行っても、日本語が書けなければ駄目と断られてしまう。
「だから娘に日本語を教えてもらってるの」。
勉強机の前で、得意げにノートを広げるお嬢さんの写真を見せてくれた。まだ小学2年生だけど、将来の夢は通訳になること。 英語、タガログ語、日本語を使い分けて高給を取り、お母さんに楽をさせたいと言ってるのだそうだ。
NIKIの仕事が終わるのは深夜2時。お客さんとの付き合いで、帰りは3時、4時になることも多い。朝早く、1人で起きて学校に行く娘のためにコンビニで朝ごはんを買って帰るのが日課になっているという。
人生相談に乗っているうちに心を決めた。「わかった、私がNIKIを指名しましょう」。
2000円の指名料のうち半分が彼女の分け前なら、朝ごはんプラスおやつ代にもなるだろう。
生まれて初めてホステスさんを指名したお礼は、一粒一粒食べさせてくれる柿の種。
私が男だったら良かったなと大いに照れる夜だった。
コメント
水商売をしながら、母子家庭で頑張るお母さん。
結構いますよね。
今の世の中、離婚するカップルが多いので、水商売に限らす、母子家庭は意外と多いですね。
昔と違い、今は男女共にしたいように、自由に生き、我慢ばかりしないのがモットーになっている世の中。
結婚、離婚、不倫・・・と、何でもありですよね。
一見、いいように見えて、実はとてもさみしい時代だなぁと思います。
お金さえ出せば、何でも手に入る時代。けれど、人の本当の心は私たちは見えているんでしょうか?
marie様
1人で眠ってお母さんを待っている子供は、優しさと寂しさを学びます。
人懐っこいくせに家庭生活に順応できなくて、自分が大人になった時また離婚してしまう例も多いとか。
これからますます少子化に向かう時代。
経済だけではなく、心を健やかに育てる社会作りを望みたいです。