村田諒太と自省録|未来は自分の主観から学ばない

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大それた失敗をした自分は終わりだと思う人たちに、もう一度のチャンスに賭ける勇気をくれたもの。それはWBA世界ミドル級タイトルマッチ12回戦で王者に返り咲いた村田諒太選手の雪辱戦です。引退覚悟で臨んだ試合で2回TKO勝ち。ボクシングの醍醐味をほとんど知らない私でさえ、もらい泣きした雄姿でした。

どんな世界にせよトップの座を得たいなら、体力やスキル以上に必要なのは、自分自身を支配する精神力。文武両刀の村田選手がインスパイアされたものが哲学書で、直近はマルクス・アウレーリウスの『自省録』だと知ってさっそく読みました。ローマの哲人皇帝と呼ばれた人格者が自分に当てて書いた内省の散文です。

自省録

 

村田選手が感銘を受けたのはこの一節。

君が心を傾けるべきもっとも手ぢかな座石の銘のうちにつぎの二つのものを用意するがよい。
その一つは、事物は魂に触れることなく外側に静かに立って居り、
わずらわしいのはただ内心の主観からくるものにすぎないということ。
もう一つは、すべて君の見るところのものは瞬く間に変化して存在しなくなるであろうということ。

この言葉から思い出したのが、映画「ファースト・マン」。月面に初めて人類の足跡を残した宇宙飛行士ニール・アームストロングの半生紀です。彼は幼い愛娘を腫瘍で失い、アポロ計画で家族同然の間柄だった宇宙士飛行士たちを事故により失いました。

ファースト・マン

次々に愛する者たちの死を目の当たりにし、次こそは自分の番だと覚悟して、大怪我を負いながらもチャレンジに突き進んで行った。もうダメかもしれないとあきらめる「内心の主観」ではなく、科学的に存在している事物だけを冷静に信じたからこそ、月面着陸を成し得たのだと思います。

でも彼の業績ですら、アウレーリウスが言っている「見るところのものは瞬く間に変化して存在しなくなる」ことです。宇宙の年齢に比べたら、人間の一生なんて瞬く間(よりもずっと短い瞬間)に消えてしまうものでしょう。それでも空気を吸って、今ご飯を食べなきゃ死んでしまうから、動物として生命を維持する本能によって、周りと戦い生き残ろうとする。個人レベルでも国家レベルでも同じことです。

 

敵とは恐れおののく心が作り出すもの。勝つために大切なのは執着を捨てることじゃないでしょうか。見ているものが瞬く間に変化して存在しなくなるのに、過去に執着している暇なんてないと思うのです。この歳になってやっと今ごろ気付いた私には、ラッキーな出来事しか訪れなくなりました。私に災いをもたらした人たちはSNSから去っていき、偶然に道で出会っても、彼らは私がいることが分かりません。気付かない振りをしているのじゃなく、お互いに目に入らない異相となってしまったのでしょう。

 

村田選手のごとく失敗から復活するために、とても単純なルールを言います。

ネガティブな波動とは自分が生み出した過去からの引き波であり、ポジティブな波動とは未来が心を突き動かす送り波です。

過去の経験で信じていいのは、失敗した自分じゃありません。失敗から立ち直って、社会的に成功した人からの助言を信じるべき。それこそが「外側に静かに立って居り」の事物だと思います。

このブログを長く読んで下さっている方はご存知と思いますが、私はどうしょうもない回り道をいっぱい経験しました。寿命からしてこれからの人生は残り少なくとも、今はふんわりとした安心感に包まれています。

アウレーリウスの『自省録』からもうワンフレーズ。

お前がこんな目に遭うのは当然だ。今日善くなるよりも、明日善くなろうとしているからだ。

明日はきっと今日よりもステキな日です。そう信じれば願いは叶う。疑えば叶わない。単純明快なルールこそ、外側に静かに立っているのかもしれませんね。

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コメント

  1. keiko より:

    1.わずらわしいのはただ内心の主観からくるものにすぎないということ。
    2.すべて君の見るところのものは瞬く間に変化して存在しなくなるであろうということ

    なんて素晴らしい言葉でしょう!ここのところすべて停滞していた心に活力をいただきました。
    しばらくプログを拝見できずにいましたが、相変わらず前進し続けているyuriさんに相変わらずかっこいいなあ~と思わずつぶやいてしまいました。

    • 織田 ゆり子 より:

      keikoさん
      夏がくるたびに思います。今より若い夏は2度と来ないし、9月に入ればもう年末モードだと。
      遠慮せずに、楽しいことを探して生きるのが勝ちですね。

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