車窓からの小さな祈り

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上りの横須賀線が大船駅に近づいてカーブを曲がると、小高い山の上に観音様が見えてくる。最初は小さく、だんだん近づくにつれて、心がやすらぐひとときだ。

今日のお顔はどうかしらと、手を合わせてご機嫌伺い。陽の当たり方によって時おり怒っているようにも見えるのだけど、大丈夫、今日は笑っていらっしゃる。

きっと嬉しいことがありますね?
今まで出会った人たち、みんなに。
今日新しく出会う人たち、みんなに。
彼らがニコリとした顔を見て、私も幸せになれますね?

こんなお願いをする間に電車はホームに入り、観音様は隠れてしまう。心のなかで、早口言葉の小さなお祈りだ。

帰りは夜になり、節電で観音様の照明が落ちるのも早い。窓ガラスに顔をつけても白い像は見えないけれど、優しいささやきが聞こえてくる。それは行きの電車でお願いしたことへのお返事で、私が予想していた通りの答えだ。

上手くいったりいかなかったり。
それは観音様の成せる技ではなく、何事も自分の責任と分かっているけれど、いつも私を見ていてくださる存在があると思うだけで楽になる、幸せになる。

だから「ありがとうございます」。
大船駅を離れる電車で、最後の挨拶はいつも言葉が同じである。

コメント

  1. 亀吉 より:

    大船の観音様、ぼくも会うたびに「おかげさまで…」と心の中で手を合わせます。
    素敵だよね。

  2. yuris22 より:

    亀吉様

    コンクリートで出来た像だとは分かっていても、言葉にできないほど神々しく美しいのです。山の上から人々の祈りをずっと聞いていらっしゃるからでしょう。離れていても常に心のなかにお姿が見えます。

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