小高い丘のてっぺんにある我が家からは雪景色が美しい。また街灯がついている早朝に外を眺めると、赤い瓦屋根にはグラニュー糖みたいな雪が積もり始め、見おろした家々はデコレーションケーキに乗った砂糖菓子のようだ。凍えたパームツリーにカメラを向けると、その奥にあるはずの海は空と同化して水平線が見えない。
うるう年に降った大雪を記録に残さなくてはと、パジャマにダウンコートを羽織って何枚も写真を撮った。その後に事件が勃発するとは思いもよらずに・・。
外出するには坂道が滑って危険なので、今日は籠城するしかない天候。二度寝したあと、リビングの暖房をつけてブランチを取っていると、いつも卑しく寄ってくる与六がいないのに気が付いた。寒いのでベッドにもぐって寝ているのかなと放っておいたが、エッグトーストの香ばしい匂いがしても2階から降りてこないのは変だ。どこかに閉じ込めたのかと各部屋のドアを開けて名前を呼んでも、チリチリと走ってくる鈴の音がしない。
そのうちひょんと現れるだろうと書斎で仕事を始めると、遠くからかすかに猫の鳴き声がする。なんと朝方に窓をあけた隙に与六がベランダに出ていて、部屋に入れてくれと鳴いているのだった。慌てて抱き上げると、被毛は濡れていても寒さに震えている様子はない。ベランダに積もった雪には元気に走り回った証拠の足跡。♪雪やこんこ あられやこんこ♪の童謡に出てくる「猫はこたつで丸くなる」は与六には当てはまらず、むしろ「猫は喜び庭かけまわり」であることが分かった。
与六はエッグトーストにはありつけなかったものの、午後からはテーブルに陣取って飽きもせずに外を眺めている。空にはカラス一匹さえ飛んでいないのに何を待っているんだろう。
コメント
与六殿
何を見、何を期待されていらっしゃるのか。宜しければお教え願いたい。
的は逗子の素浪人様
雪は水と違って喰えるニャン。でもお腹に溜まらないのはなぜニャ?
雪、綺麗ですね。
素の風景が良い逗子ならではですね。
岩手は相変わらず雪が残っていますし、たまにチラチラ降っています。
雨よりは好きですが、大量に降られるとやはり嫌ですね。
春は待ち遠しいですが、花粉の季節も到来なので私にとっては憂鬱な日々も続きます。
marie様
今年は冬が長いですね。天気予報を見ると東北ではまだ大雪が続いているのに驚きます。
三月になると必ず思い出すのが丸山薫の詩。『白い自由画』という詩だったでしょうか、寒々とした雪を描いた子供たちの絵に黄色い絵の具を一滴たらすと、いっせいに「まんさくの花が咲いた」と喜ぶのです。
大震災からもうすぐ一年。被災地の方々の心を明るくする幸せの花が咲いてほしいと祈っています。