花を選ぶ男の子たち

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紅葉
ベランダから見る紅葉がひときわ赤い。去年よりずっと寒く思えるのは猫も同じか、冷え込む明け方には与六が必ず腕枕をせがみにくる。早起きしたいのに、柔らかいぬくもりを抱えていると起きるに起きられず、片方の手でスマホのメールチェックをするのが日課になった。

ポプラ
午後から都内で会議のあった昨日は一日を通して時雨。マンションの斜行エレベーターへの道には濡れたポプラの葉が寒々と散っている。逗子行きのバス停に下りてがっかりしたのは、晴れた日にはちんまりと出店している移動式の花屋さんがいないこと。実はここで先日とても可愛い光景を見たのだ。

その日は小春日和。小学校中学年とおぼしき男の子が3人、その花屋さんにやってきた。リーダー格と思えるイケメンくんが友だちを紹介して言う。「この子のお母さんが病気だから、お花をプレゼントしたいんだって」。
予定金額は150円。店員さんにお金を渡した男の子は地味で小さい白い花を選んだ。すると店員さんは「それじゃお見舞いには寂しいな。お金は気にしないでいいから、どれでも好きなのを選んでいいよ」と太っ腹だ。いちばん高い、真っ赤なポインセチアに目を促している。

そうは言われても図々しくはできない。イケメンくんは同じ赤色でも「アネモネなんていいんじゃない」と200円ぐらいの鉢を指さした。ブランドTシャツを着て、アネモネという名前まで知っていて、ちょっと足の出る値段を選ぶとはただモノじゃないぞ。
しかし主役のシャイな子は最初に選んだ地味な白い花の前でウロウロしている。同じ種類でもピンクがあるのに、なぜその花がいいのか周りは首を傾げているが、店員さんは黙って頷いていちばん元気な鉢を選んだ。

鉢を袋に入れてもらうのを待つ間、彼らは妖怪ウォッチの話で盛り上がる。何かの事情があるにしろ、家庭環境の違いはあるにしろ、みんなやっぱり普通の小学生だ。賑やかな声をあげながら走っていく後姿を見ながら、あと一か月後にすてきなクリスマスが来ますようにと願いをかけた。今どきの子はサンタクロースなんて信じていないかもしれないが、きっと神様がサプライズをくれるはず。

バスと電車を乗り継いで都内まで2時間かかる場所に住んでいても、こんな心あたたまる光景を見られるのは一等地に違いない。復興支援のボランティアで宮城県の亘理町まで出向く明日は、晴れたバス停に立てればいいなと天気予報をチェックした。

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