私 「セーターが肌になじむ頃になると、小さな森にドングリを拾いに行きます。落ち葉をかさこそ分けながら、手のひらをコーヒー色の木の実で満たすと、宝物を抱えた子供に戻ります。
あの頃は限りなく深く広く見えた森も、膨らむ街に削られてどこか寂しげです。
手のひらのドングリを誰かに見せたくて、でも見せたい人はもういなくて、大きな木に囲まれた高い空を見上げています。」
僕 「銀の翼が深い空に飛び立ち、たちまち点になって消えていく。エアポートの待合室で、僕は搭乗アナウンスを待っている。右手にビールのグラス、左手に『サヨナラ』とだけ書かれた浅葱色の便箋を広げながら。」
私 「少女のころから欲しいものは何でも手に入りました。
まぶたをゆっくり閉じて眠る人形、ピエロの踊るオルゴール、南に向いた小さな部屋、マホガニーのベッド、愛するより先に愛してくれる人たち。」
僕 「喧嘩のあとで折れるのは必ず僕のほうだった。それが楽しかったんだ。
今にも泣き出しそうな君の顔が、わがままに気づかない少女の輝きに戻るとそれだけで幸せだった。
グッバイばかり繰り返してきた男は、きっと次のハローが怖いんだ。」
私 「あなたの瞳がだんだん暗くなるのに気づいていました。
本棚に並んだアフリカの写真集。日ごとに開かなくなったのはきっと私のせいです。
愛されることだけで育ったわがままな娘が、たったひとつ手に入れることが出来ないものを知りました。」
僕 「サバンナの国で暮らすのが、少年の頃からの僕の夢だった。たとえそこへ行けなくても良かったんだ。
でも僕は今、ひとりで南回りの飛行機を待っている。生まれた国と君に、またひとつサヨナラを言って。」
私 「アフリカ行きのこと、あなたの仲間から聞きました。幸せだった頃、一度も言えなかった言葉を便箋に書きました。
手のひらの木の実を地面に返してあげます。私はもう、欲しいものが何でも手に入る少女じゃないんです。」
僕 「サバンナの国から真っ先に返事を出そう。たった一言、ハローとだけ書いて。
今度君と会ったら、もう一度やりなおすんだ。君よりわがままな少年に生まれ変わって。」
私 「待っていてもいいかしら。たとえそれが芽をふかない木の実でも。」
コメント
どんぐりと静かだけど激しい感情
生命の息吹ですね。
今年はなぜ「青いのだろう???」
セーラー服が汗ばむ季節に
私の拾う「どんぐり」たち・・・
風に負けたの?
雨に負けたの?
でも、君達を子供に届けるよ・・・
いろんな希望をこめて・・・
James Byron Dean様
このミニドラマの主人公のように、秋になるとドングリを拾うのが
私の毎年の楽しみです。
下ばっかり見て歩いているので、ついでに松茸でも発見できれば
ラッキーなんですが、まあ一生無理でしょう(笑)
ドングリ拾いというと、トトロの世界を
思い浮かべます。w
小学生の頃、学校帰りに体験したのに、
今となっては幻想的な思い出の空間ですね。
後半のような大人の恋愛は未経験(核爆
こまちゃん
>後半のような大人の恋愛は未経験(核爆
何をおっしゃる。
ご自慢の奥様とラブラブじゃないですか(^_^)
充分すぎるくらいの大人の恋愛です。