大学を卒業する頃、左手の薬指には青いサファイアの指輪が輝いていた。5月末に結婚式を控えたエンゲージリングだ。私の誕生石はトルコ石なのにも関わらずサファイアを選んだのは、婚約者に連れられて行った宝石の卸屋で、「この石はお得プライスですよ~」と勧められて買ったというショボい理由である。
やがてサファイアのリングがプラチナの結婚指輪に代わったのも束の間、2年後には離婚届と共にサヨナラしたまま、2つのリングは何処に片付けたのか全く記憶にない。どうせ安売屋で仕入れたのだから、今さらヤフオクに出しても大したことはないだろう。
「夏の香り」という韓国ドラマで、ソン・イェジン演ずるヒロインは大粒ダイヤのエンゲージンングをはめている。他に好きな男が出来て外したものの、第18話でまた同じリングが指に戻ってくる。車の中で、復縁した婚約者が薬指にリングをはめるシーンを見ながら、私は自分の婚約式&結婚式のシーンを思い出していた。無事に関節を通ってくれ~!の悲願である。
私の左手の薬指は、昔バレーボールで突き指したせいか第2関節がやたらゴツゴツと太い。従って指の根元にマッチしたサイズを選ぶと、関節にひっかかって先まで進まず、せっかくの夢見た儀式が悪戦苦闘でストップしてしまうのだ。
忘れもしないホテルオークラ・神前結婚式の会場。クライマックスのシーンで白無垢姿の新婦は、ドキドキしながら左手の薬指を差し出して待っていた。新郎はプラチナのリングをはめようとしながら、どう押し込んでも入らない。だんだん顔が紅潮して汗ばみ、神主さんは不安げに小さな咳払いをする。もう限界と焦った私は彼からリングを奪い取り、自分の手でエイヤッ!と薬指にはめこんだ。不吉な予感がよぎる。リングが指に入るのを拒んだその時点から、たぶん離婚は約束されていたのだろう。
今の私の左手には何のリングもない。右手にはバブリー価格なカルティエのエタニティリング。なんで自分で買ったのだろうと首を傾げながらも、サイズからして右から左に移動することは無理だ。
安売屋のサファイアもカルティエのダイヤモンドも輝かない、左手の薬指は未だに空いている。約束の証しをはめてくれる人には、予めサイズを聞いてねとだけ言っておこう。愛に出世払いはないのだから、たとえ藁(わら)の指輪だって構わない。プライドでもなく見栄でもなく、素朴でジャストサイズな心をプレゼントしてくれるのがマイ・ヒーローだと思っている。
コメント
yuriさん、ご無沙汰してます。元気ですか!?
yuriさんにはジモティのファンが多いから
きっとみなさんと毎日楽しく過ごされていることでしょう。
エンゲージリングは、二人の身の丈が一番ですよね。
値段じゃなくて気持ち。
僕は金属アレルギーではないのですが、
金属ものを肌に身につけるのが苦手で、
前妻との結婚指輪はデートや旅行の時はつけていましたが、
ふだんは勘弁してもらっていました。
浮気をしたことはなかったのですが、
彼女としてはつけていてもらいたかったようです。
ダイ・ハードの2だったかな。
ブルース・ウィリスが空港のカウンターの女性に
ちょっと色眼鏡を使われた時に、
申し訳なさそうん薬指の指輪を触ってみせる姿が
かっこいい、僕もやりたいなと思ってしました。
まあ、いろいろありますが、
お互い、幸せを求めて頑張りましょう!!
たけぞう様
いつも読んで頂いてありがとうございます。
左手の薬指にリングをはめている人を見ると、内情は知りませんが、ちょっと羨ましく思います。魔よけか虫よけか愛情の証か、いずれにせよ守るもの&守ってくれるものが存在するって事ですからね。
指輪ごときに拘るのは人間が小さいのかなあ。でもね、幾つになろうと女はシンデレラの夢を見る動物なのです。目指せハッピーエンド!です。