笑う犬を飼っていたこと

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昨晩の夢に昔飼っていた犬が出てきた。もう一度会いたくて、今日は物置を引っ掻き回して写真を探している。

高校生のころ、我が家には映画「101」でお馴染みのダルメシアンがいた。名前はポール。街の中で汚れてウロウロしているのを母が見つけ、車のドアを開けたら飛び乗って来たので連れて帰った犬だ。

飼い主が見つからないためにそのまま我が家のペットとなり、獣医さんの見立てでは年齢は若いし病気もない。品評会に出したら優勝しそうなほどりりしい犬だったが、どうしようもない欠点が発覚した。食い意地が張り過ぎていたのである。

散歩に連れて行くとリードをグイグイ引っ張られ、お菓子の包み紙や犬の糞、雑草など口に入るものは片っ端から拾い喰い。父や祖父が腕力で制止しようとしても、ポールの狙う場所へ走らされ引きずられ、へとへとになって帰ってくるのが常だった。

悪癖を根絶せねばと策を練った私は、あらかじめ散歩コースに赤唐辛子を撒くという作戦に出たのだが、敵もさる者。ポールは目を真っ赤にしながら、道に仕掛けておいた赤唐辛子を完食したのである。

そんなMAXに達した憎たらしさは1日一回リセットされる。私が学校から帰ってきた時は必ず、犬小屋からお迎えに出てきたポールが思い切り歯をむき出してニカーッと笑うのだ。
その顔に負けて散歩へ連れ出し、また腹を立てての繰り返しだったが、ある朝のこと、犬小屋の前でポールは横たわり冷たくなっていた。原因は誰かが投げ込んだ農薬入りのドッグフードだった。決して人に吠えたりしない(むしろ尻尾を振る)犬だったのに、学校に行っても涙はずっと止まらなかった。

今日探しているのは、春の堤防で一緒に撮った写真。土から頭を出したツクシを散歩がてら取りに行ったのに、私が摘み取ろうと手を伸ばすとポールがパクッと食べてしまう。コラッ!と叱ればニカーッと笑うあの顔は記憶の中にしかないけれど、今でもふと名前を呼びたくなる家族である。

コメント

  1. 的は逗子の鈍亀素浪人 より:

    犬て笑いますよね。本当に天真爛漫で癒されます。「唐辛子」作戦もやりましたが、全く意に介さずでした。
    最初の犬は小学校の時に亡くなりましたが、その時学校に休んだかも?それだけ僕の大切な友人でした。今でも時々顔を思い出します。
    最後がホントにかわいそうですね。気の良いポールだったんですね。

  2. yuris22 より:

    的は逗子の素浪人様

    当時は室内にチンも飼っていました。気位の高いメスで、外から尻尾を振って見ているポールは相手にされなかったなあ。それでも決して怒ららない、気のいい犬でした。

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