歌には風景も人間も生きている

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テレビの歌番組を見ることが滅多にない私が、昨夜はNHKの「第43回思い出のメロディー」を最初から最後まで釘付けで見てしまった。千昌夫が生まれ故郷の陸前高田を思いながら歌う『北国の春』に貰い泣きしたのを皮切りに、懐かしい歌の数々に胸が熱くなった。
3.11の東日本大震災をうけて「日本の元気を歌で伝えよう」というテーマだったが、演歌もポップスもジャンルを超えて、「夢」とか「希望」とか普段だったら照れくさい歌詞に、涙がポロポロこぼれたのはどうしてだろう。

思い出すのは昭和のテレビ。懐メロ番組が大好きだった父はビールで一杯やりながら、私を必ず隣に座らせて、藤山一郎、淡谷のり子、霧島昇といった往年の歌手たちに拍手を送っていた。こんなお爺ちゃん・お婆ちゃんの歌のどこがいいんだろうと、子供にとって苦痛でしかない時間であったが、何度も聴かされたメロディーと歌詞はカラオケで歌えるほど記憶に残っている。

こうして覚えてきた懐メロが仕事で役に立ったのは、御巣鷹山の日航123便事故で亡くなった坂本九さんの追悼コンサート。ロカビリー時代のスターたちが集結したコンサートの構成を担当したのだが、ひよっこで駆け出しの私が使用曲の全部を知っているというのは、母のお腹にいるころから聴かされていた歌番組のおかげだった。
やがて自分でチャンネルを選べる歳になっても「夜のヒットスタジオ」「ベストテン」「ザ・トップテン」等々、毎週欠かさず見ていた頃が懐かしい。そこにはいつも家族が横にいる温かさがあった。

大震災があってなおさら、今年のお盆休みは家族の絆がいっそう深まる時に思える。田舎に帰ってきた久しぶりの顔たちが集まる夕げの時間。たぶんあの当時の私みたいな子供が、祖父母に付き合わされて「思い出のメロディー」を見ているんだろう。空へ旅立ってしまった人たちを偲んで、みんなが若く元気だった良き時代を偲んで、「歌は世につれ世は歌につれ」が伝承されていく。

家族は離れ離れになり、テレビを見た茶の間はもう無くても、歌にはふるさとが残っている。誰かに歌い継がれていく限り、風景も人間も昔のままで生き生きと残っている宝箱なのだと思った。

コメント

  1. marie より:

    陸前高田は私にとっても思い出の場所です。
    歴代(?)彼氏との思い出もあります(笑)
    結婚してからは家族でのドライブ、海水浴の思い出…等々

    歌はその時代、思い出が沢山ありますよね。
    懐メロが流れると、自分がその時に何をしてたか、どんな恋をしてたか…。

  2. yuris22 より:

    marie様

    ラブソングを聴くと、その当時に付き合ってた人を思い出しますね。
    歌詞を拡大解釈して、自分の恋に酔ってたこともありました(^^;
    歌に罪はないのに、別れた人のせいで二度と聴きたくない歌もあります(笑)

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