私は昔からスピリチュアルな世界に興味津々だった。次元上昇のアセンションブームには夢中になったし、自分を取り巻く霊的世界にも関心があるし、宇宙の真理を考え出すと止まらない。
しかし心理カウンセラーの資格を取ってから内部に変化が起きた。スピリチュアルに傾倒しすぎていた自分を冷静な第三者の目で見ることが出来るようになり、逸脱していた部分に気付いて修正する理性が芽生えたのだ。これぞ岡目八目の世界である。
心理学とは人間の存在や可能性を「心」と「理屈」で唱える学問だ。分析心理学の創始者であるユングは、シンクロニシティ(意味のある偶然の一致)やトリックスター(マンネリから脱するため無意識が引き起こす一発逆転の出来事や人物)など、人類の集合無意識の概念に踏み込み、あり得ないものはないという考え方を学問へ持ち込んだ。後にユングの研究はポルターガイストやテレパシーといった超常現象の分野へ範囲が拡大していく。その先にトランスパーソナル心理学やスピリチュアルな領域があるわけだが、ある種「神がかった」話を新興宗教のように捉えて不信感を持つ人も多い。
心理カウンセラーとなって私が変わったのはスピリチュアルを楽しみながらも、「自分は天から特殊能力を授けられている」という特権意識を捨てたことだ。生活していく中で不思議なこと、ラッキーなことは沢山起きるが、それは選ばれた自分にだけ起きるのではなく、心の深層にある集合無意識から発生するもの。集合無意識とは大きな氷山の根みたいなもので、個人を越えた人類の心に普遍的・先天的に存在している領域だ。つまり奇跡は誰にでも起きるのである。そして誰もが幸せの頂点と不幸のどん底を経験する。
「人間にはさまざまな運命があります。
神様は公平で、一人の人間にだけいいことばかりは与えません。
長い一生を見れば、どんな人も、いいことや悪いことに くり返し見舞われています。
雨の日が一ヵ月もつづくということはないのです。雨のあとにはきっと天気がめぐり、青空が上がります。
人間の生活も必ず青空が上がります。
同じ状態がつづかないことを仏教では無常といいます。」
(『生きることば あなたへ』瀬戸内寂聴著・光文社文庫より引用)
神様の手のひら(集合無意識)に、せめぎ合って乗っかっている私たち。無常の風に吹かれて落ちそうになる順番は、端から代わりばんこに巡ってくる。もし落ちたらまた乗っかれば良い。自分は万能だなんて思わずにいたら、生きることはもっと楽になるだろう。
コメント
何か嫌な事が起きると「何で自分だけが・・・」と誰もが思いますよね。
逆に大富豪やお金持ちを見ると「何であいつだけが・・・」なんて妬む人も沢山いることでしょう。
しかし、人間生きる上でお金は必要ですが、有り余るお金があっても心が寂しい人も居ます。
逆にそんなにお金が無くても愛に満ち溢れた生活を送っている人もいます。
瀬戸内寂聴さんの言葉は本当にうなづけるものばかりだと思います。
marie様
思い上がりも落胆も、他人と自分を比較することから生まれるのでしょうね。
今は辛くてもハッピーエンドの人生だと信じていれば、ちゃんと辻褄が合うのだと思います。「神様は悪いようにはしない」って言葉、私は好きですよ。