父の宝物

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昨日から父の荷物を片付けている。
服や生活道具ではなく、会社に保管してあった社長時代の雑書類だ。

父は今年で79歳。
脳出血で倒れて左半身麻痺になり、今は介護施設に入っている。
どんなにリハビリしようと仕事に復帰できるわけはなく、介護スタッフたちに我が侭を言いながら、穏やかな「これから」を過ごしたいと望んでいる。

 

貴重品ファイルと書かれたカビ臭いバインダー。
くっつき合ってしまったビニールシートをベリベリと剥がして、中を確かめる。

 

経営のヒントを得た新聞記事は、セピア色に変色した昭和50年代のスクラップ。
若いころに社長仲間と撮った集合写真は、浴衣姿で赤い顔の温泉宿。
初めて仲人をした披露宴のスピーチ原稿。
趣味で米作りを始めた最初の収穫。コシヒカリを贈ったお客様からの温かいお礼状。
過疎の村に第二の故郷を作ろうとした父を紹介して、新潟新聞に連載した私の記事。

ファイリングは10年ほど前で途切れてしまっているが、時々取り出しては眺めていたのだろう。
日記は書かない人間だったが、形にして取って置きたい記憶が詰まっている。

 

今度父に逢う時は、これを持っていこう。
「覚えてる?」と見せたらきっと「忘れちゃったよ」と言うだろう。
「忘れちゃったけど、読んでくれたら思い出す」とも・・。

新聞記事の一文一文を読み上げるのは大変だけど、介護施設の棚に並んだ本を読んであげるよりも、頭の老化防止には効果がありそうだ。

元気で生きていようね。きっとまた良いことがあるから、お父さん。

コメント

  1. やーさん より:

    大変ですね、偉いですね、頑張って下さい、
    全てまったく当てはまらないアナタの気持ちに、行為に
    敬意を表します。

  2. たそがれ より:

    大事な大事な「お父さんの宝物」ですね。
    きっと、読んでもらったりしていると、色々と思い出して、自分で記録に残したいと思うかも知れませんね。

    >元気で生きていようね。きっとまた良いことがあるから、お父さん。

    命をつむぐ・・・こころに響きます。

  3. yuris22 より:

    やーさん

    父に逢いに行くたび、居たたまれなくて今すぐ帰りたくなります。
    私が隣にいる事だけで満足している父は、全てを見透かしているのでしょうね。

  4. yuris22 より:

    たそがれ様

    家族としては、思い出して欲しくない宝物もあります。それでも思い出してもらわなくちゃ、元気になってもらわなくちゃ。

    自信満々で偉そうな昔の表情は、また復活してくれるのかと思っています。

  5. おはようございます。

    童謡、ヨットそして今日の話を興味深く読ませていただきました。
    「さるさるさ」の詞を読みながら、子供番組を楽しんでいたころを思い出しましたよ。一流ミュージシャンとの合作。豪華で楽しい曲だったでしょうね!

    お父様のファイルの片付けの話を読みながら思いました。「私自身のファイル類は、全然、整理できていない!」。次の帰省で、少し片付けなくちゃ。

    今日も素敵な文章を読み、ゆったりした気分になりました。ありがとうございます。

  6. こまちゃん より:

    >父に逢いに行くたび、居たたまれなくて
    >今すぐ帰りたくなります。

    大変ですよね。介護らしきことを3回経験して
    やるせなさ、無力さを感じました。

    でも、双方にとって一生の思い出ですよ!

    後悔しない様に、自分の思いを伝えたいですね。

  7. yuris22 より:

    こまちゃん

    3回も経験してるんですか。頭が下がります。

    親も私も一度きりの人生。ほんと、後悔しないように付き合っていきたいです。

  8. yuris22 より:

    単身赴任のYHさん

    家族であっても見られちゃ困るものは、片付けるなり隠すなりしないと・・ですね。
    父の場合もガールフレンドと写っている写真は「・・・」でした。

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