去り逝く者と残された者

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前から気になっていた映画「象の背中」を観に行った。
余命半年の肺癌を宣告されたサラリーマン(役所広司)が、「死ぬまで生き続けたいんです」と延命治療を拒否。残された時間を家族、愛人、思い出の人たちとの交流に費やすというストーリーである。

死期が近づいた象は群れから離れて、孤独な死に場所を探しにいく。
しかしこの映画の主人公が選択したのは、愛する人たちに看取られて息を引き取りたいという「幸せな死」だった。

 

映画の構成自体はどこに焦点があるのか今ひとつであったが、涙がこみあげてきたのは絶縁していた兄(岸部一徳)が、スイカを下げてホスピスに訪れるシーン。
「なんで若いお前が先なんだ」と泣く兄に、「本当は死ぬのが怖い」と打ち明ける弟。
その間にも着々と、狂った細胞は身体を蝕んでいるのだ。

 

昨年の6月、私は恋人を癌で失ったが、「死ぬのが怖い」の言葉は一度も聞いたことがなかった。むしろ死の直前まで延命治療の道を探していた。
彼が私の前で涙を見せたのは、傲慢な医師に治療を断られたときの一回きり。
でもきっとこの映画の主人公のように、本音を話せる男同士で(彼にも家業を継いだ兄がいた)号泣したのかもしれない。

 

象の背中とは、群れを離れる背中から転じて、勝手な解釈をすれば「男の本音」という意味に感じる。
そこには嘘もあれば、図々しくもあり、弱々しく無防備でもある。
愛する女性を悲しませたくないのに、さとられてしまう間抜けな背中でもある。

 

でもね、わかって欲しいな、涙を越えた女こそ逞しいことを。
貴方が逝ってから2回目の誕生日がくるけれど、素敵な彼に祝って貰いますからね。
きっと喜んでもらえる生き方をしていると、空に向かって胸を張るこの頃である。

コメント

  1. 美威 より:

    ステキです。
    私も2年ほどの前の6月母を亡くしました。ついで9月に大好きだったおばあちゃんも・・・
    いろいろ事情があったのですがそのとき「自分は幸せにならなきゃいけない」と心の底から思いました。
    次の誕生日は自分で自分にご褒美で、着物で伊勢神宮参拝に行ってきます。
    ステキなご縁御願いしてきます。
    ↓のコメントもありがとうございました。
    どこか見えるところに文字で掲げておきたいと思います。

  2. 髪結いの亭主 より:

    私は孤独な死を望むなぁ・・・
    皆の愛に包まれ生まれたけど、
    一人で静かに飲みながら時を迎えたい。
    でもその前に本当の私の魂の伴侶に会いたい。

  3. yuris22 より:

    美威様

    そうでしたか。私も昨年は4月に大好きな祖母を亡くし、6月には恋人
    を亡くすという連続ショックでした。
    でも不思議ですね。先に旅立ってしまった人たちがいると思うと、い
    つか自分の番が来た時には冷静に受け止められるような気がします。

    空の上で報告会をする時のために、幸せな思い出をいっぱい作ってお
    かなくちゃ。

  4. yuris22 より:

    髪結いの亭主様

    私は穏やかな春の日に、眠るようにフワーッと逝くのがいいな。
    庭からは孫たちが遊ぶ声が聞こえている昼下がりで。
    そんな幸せなおばあちゃんになりたいです。

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