赤いやねの家

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赤いやねの家

でんしゃのまどから 見える赤いやねは
小さいころぼくが すんでたあの家
にわにうめた柿のたね 大きくなったかな
クレヨンのらくがきは まだかべにあるかな
今は どんなひとが すんでるあの家

せのびして見ても ある日赤いやねは
かくれてしまったよ ビルのうらがわに
いつかいつかぼくだって 大人になるけど
ひみつだったちか道 はらっぱはあるかな
ずっと心の中 赤いやねの家
赤いやねの家

教育テレビで「ふえはうたう」という番組の構成をしていたころ、作曲家の上柴はじめさんと共に、毎回のように新曲を発表した。
単にリコーダーの指使いを練習するだけの曲でなく、情感のある歌詞をつけて、もっと音楽を好きになってもらおうという狙いである。

この「赤いやねの家」は、「峠の我が家みたいな、懐かしい曲調が欲しいな」という私のリクエストに応じて、上柴さんが作曲した「メロ先(めろせん・・メロディが先にあり、後から詞をはめこむこと)」だ。
構成会議の席でプロデューサーに見せたところ、「なんだかこの辺がジーンとしますね」と、彼は胸のあたりを押さえた。

番組が終了してもこの曲は一人歩きし、やがて小学校の教科書に載り、卒業式や合唱コンクール等のセレモニーでよく使われる曲となった。
「おかあさんといっしょ」で歌われたり、今ではアーティスト達もとりあげ、KABや岡本知高さんのアルバムにも入っている。
Googleで検索して頂けば、相当数のヒットがあるはずだ。

しかしやがて、そのヒット数も徐々に少なくなるだろう。
なぜなら学識者たちから、壁に落書きをしたり、秘密の近道を通る行為を推奨するような歌は宜しくないという意見が出され、教科書から消えつつあるらしい。
まるで戦争下の日本の、大本営陸軍部の検閲のようだ。
作者である私としては、子供のころの「やんちゃな」思い出を詞にしただけで、不良行為(?)を推奨したわけではないのだが・・。

歌を歌うことは、心を開放することだと思っている。
ともすれば殻にこもり、喜怒哀楽を閉じ込めてしまう最近の子供たちに、感情を喚起させる一手段でもあると思う。
音楽教育の行方が心配だ。

「してはいけないこと」を子供たちに教える教育か、「してほしいこと」を教える教育か、どちらが彼らの未来を明るくするだろうか。


この記事についてはオフィス・マツナガさんのブログ(2007年02月11日)にも載った。

コメント

  1. しずく より:

    この曲は、照れ屋で自分から歌うことなど全くなかった息子が、ただ一度だけ自分から歌った曲です。私が運転してるときに、後ろの座席にいた息子が急に歌い出しました。私もいい歌だと思っていたので、その曲を自ら口ずさんだ息子の気持ちが分かるような気がしました。
    息子は、今では大学生で家を離れてしまいました。
    私は、この曲から幼いときの息子を思い出したりしています。

  2. yuris22 より:

    しずく様

    とても嬉しいコメントをありがとうございます。
    歌詞に出てくる「壁に落書きをする」とか「秘密の近道を通る」といった行為がけしからんと、教育者からのお叱りを受けたこともあるのですが、また来年から小学校の音楽の教科書2社に載ることが決まったそうです。

    誰にだってやんちゃな子供時代はありますし、それを大人のフィルターを通して見てほしくないのが私の願いです。子供の歌を聴いたお父さんお母さんを、小さい頃に連れ戻してくれる歌をこれからも作っていきたいと思っています。

  3. しずく より:

    何年も前に書かれたブログにコメントしたものですから、お返事をいただけるとは、とても驚きました。ありがとうございます。大変光栄です。
    教育関係の方の中には、いろいろとご心配なさる方もいるでしょうが、だからといってこの曲や歌詞が否定されたとは思いません。この曲には、そんなことを飛び越してしまうものがあるように思います。
    私が今頃になってこの曲のことが知りたくなり、検索して、このブログにたどり着き、こうやってコメントを頂けたのもこの曲の持つ、強く心に響くもののお陰です。
    歌詞というものは、誰もが感じてはいるけれど、それまであまり言葉にしていないようなものに歌の中で出会ったとき強く心を揺さぶられるように思います。そう感じる歌詞が、この頃の私には2つあります。そのうちの1つがこの曲です。
    教育関係の方からのお叱りと書かれていらっしゃいますが、この曲に関しては、あまり気にし過ぎない方がいいと思います。芸術とか表現には批判がつきものだと思いますし、もし、初めにそんな批判を受けて、この曲が誕生していなかったとしたら、それは残念過ぎることだと思いますから。

  4. 陽子 より:

    昨日、おかあさんといっしょで聴きました。
    心に染み入る歌だなぁと、歌詞に込められた想いがわからないかしら?と作詞家さんの名前で検索してみようとやって見つけました。
    歌の出来た経緯を見ますと、悲しい内容ではなさそうで何よりです。ネット情報で真偽がわからなくても「あの歌は悲しい出来事から作られた」とか見てしまうとそうかもなぁ?と思ってしまうので。
    植えた柿の木、落書き、近道、線路から見えていたのに見えにくくなった家、全てが私にも経験があり、共感されるかたも多いことでしょう。
    たまたまですが、我が家も赤いやねの家です。子供向けのアニメでも家の屋根や親の車が赤いのをよく見かけます。視認度が高く、心に残りやすいのかなと思っています。
    最後になりましたが、素敵な歌を作ってくださり、ありがとうございました。

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