梅雨を表現する美しい季語たち

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昨日までの蒸し暑さが小休止して、朝からひんやりとした雨が降っている。我が家の回りではアガパンサス(ムラサキクンシラン・紫君子蘭)の花茎が背比べを始めた。ネギ坊主みたいな花被片には薄紫の蕾たちが透けて見えて、一触即発で今にも弾けんばかり。そろそろ関東も梅雨入りなのだろう。

アガパンサス1
アガパンサス2

週間天気予報を見ると雨マークや曇りマークの日が続いている。本格的な梅雨に入る前のこんな天気を「走り梅雨」とか「梅雨の走り」と呼び、「走り」は魚や野菜で言われるように、初もの・走りものの意味だ。鬱陶しいというよりも、四季のある国ならではの季節の定期便で、猛暑を迎える前の植物たちにとっては命の雨である。

 

ちなみに「梅雨」とは立春から135日目の入梅から始まって、それから出梅までの30日間の時候のことを言う。他にも梅の実にちなんで「梅雨」「梅天」「青梅雨」、カビが生えやすいことから「黴雨」といった季語があり、雨そのものは「五月雨」と言うのだそうだ。

旧暦の五月、つまり現在の六月に降る雨のことで、さみだれの「さ」は神に捧げる稲、「みだれ」は水垂れ。田植えの季節の雨だから農家にとって有り難い雨となる。

 

歳時記からもう一つ見つけたのは「霖雨」(りんう)、「霖」は訓読みにすると「ながあめ」だ。時候の挨拶に「霖雨の候」を使うのは6月。長雨ならば秋もその季節と思ったら、 秋の初めに降りつづく雨として「秋霖」という言葉を発見。林の上に雨冠が乗った漢字からはどんよりとした空の色や湿った土の匂い、傘にパラパラと当たる雨音、セーターの恋しい寒々しさ等の五感が引き出される。

 

言葉って面白い。漢字、平仮名、カタカナ、そして英語も使う日本人に生まれてきたのは何て贅沢なんだろう。ずっしりと重い歳時記をめくって選んでみた俳句は、だんだん雨脚が強まってきた夕暮れに似合っている。

「ありとあるものの梅雨降る音の中」 長谷川素逝

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