面倒な果実たち

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とても懐かしい果物を見つけて買ってしまった。写真に撮るとオレンジのように見えてしまうが、直径は3~4cmの柑橘類「きんかん」だ。

きんかん

小学校に上がる前、私は愛媛県西条市小松町という所に住んでいた。祖父母、父母、叔父たち計7名の家族で、広い庭に囲まれた邸宅だったように記憶している。
一人娘の私は内弁慶で、外に遊びに行くのが苦手。四季折々の花が咲く庭でブツブツと独り言を唱えながら、想像の王国の主となって遊んでいた。

色々な果樹があったうち、おチビちゃんの手が届くのは1つだけ。黄色い実をたわわにつけた「きんかん」で、庭を1周したら1個だけ食べていいという自分ルールに則って、幾つもお腹に入れた記憶がある。
「これは皮を食べるのよ」と母に言われても、苦くて美味しくない。種だらけの酸っぱい実をチューチュー吸いながら、なんて面倒な果物だろうと思っていた。

食べにくさと言えば裏庭にあった「ざくろ」も同じ。硬い外皮を割ると、赤く透明な果肉が無数にあるのは嬉しいが、小さすぎて噛むとすぐに種に当たってしまう。祖父におねだりして取って貰った宝物を、ブランコに揺られながら一粒一粒むしっては、不便な甘酸っぱさに長時間費やしていた。

幸せの王国は長く続かず、やがて祖父の会社が倒産して一家離散。核家族となった父母と私は何度も引越しをしながら歳を取り、さらにバラバラとなった今はマンションの一人住まいだ。

近所を散歩しながら憧れるのは、垣根から木の枝がはみ出して「みかん」が生っている家。ゴツゴツと大きくなったまま放置しているのを察すると、酸っぱくて実が少なくて種だらけの面倒な果物なのだろうか。
指を黄色く染めて「きんかん」をかじっていた女の子は、取れない果実を記憶の庭から見上げている。

みかん

コメント

  1. 素浪人 より:

    「きんかんとザクロ」、なつかしい果物ですね。
    子供のころは、「カキ」と一緒に、各庭にあったように思えます。
    あ!、それから「いちじく」ね。
    全部失敬して食べたいたのが懐かしいなぁ。

    今、「きんかん」は、はちみつで煮て、2,3日して丸ごと食べてますよ。おいしい…。
    民間療法で、風邪予防に効くそうですよ。

  2. yuris22 より:

    素浪人様

    いちじくは私も懐かしいです。小学生の夏休み、祖母の家に行くと竹竿の先に袋をつけて、熟した実を取ってくれました。蚊に刺されながら、かゆくて暑くて美味しい思い出です。

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