アイスクリーム・メモリー

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「赤いやねの家」のモデルになった町で、駅の近くに西方マーケットという寄り合い商店があった。古びた木造の長屋の中に八百屋、魚屋、肉屋、お菓子屋などが小さな店舗を出している。レジ袋なんていう高級なものはなく、新聞紙でくるんだ商品を、店主が「ほい、ありがとう」と買い物かごに入れてくれる方式だ。

買い物メモを渡され、おつかいに行った私へのご褒美はアイスクリーム。いちばん手前にあるお菓子屋で、白い冷凍ケースの蓋を開ける瞬間がとても嬉しかったのを覚えている。
どんなに暑い日でもカキ氷には興味がなく、ケースの中を掘り返して探したのは紙カップ入りのバニラアイス。プレミアムアイスなんて上等なものではなくて、ラクトアイスという乳固形分が少ないカップだ。カチカチに冷えたのを選んで、木のスプーンで少しずつ削って口に入れるのが、長時間楽しめるコツだった。

あんなに大好きだったアイスクリームが、今はコース料理のデザートで食べる程度。コンビニの種類豊富なケースを探しても、子供の頃と同じ味は見つからない。

アイスクリーム

気温が28度に上がった日曜日。レトロな商店街の喫茶店で、通りの向かいにあるこれまたレトロな食料品店を眺めていたら、走ってきた少年と少女が何かを熱心に覗いている。ガラスの蓋の下にあるのはアイスクリーム。どれにしようかと5分以上も悩んでいた。

何台か車が通り過ぎて、彼らが何を選んだのかは見えなかったけれど、ノースリーブのワンピースを着た女の子の後ろ姿に、西方マーケットの自分がオーバーラップした。
梅雨が終わってセミが鳴きだせば、大好きな夏が始まるね。手のひらに握ったコインで、思い出を幾つ手に入れるのだろうか。

コメント

  1. たそがれ詩人 より:

    絵日記帳に描き切れないぐらいの思い出ができるといいね。

  2. yuris22 より:

    たそがれ詩人様

    夏休みの絵日記帳、懐かしいですね。宿題を溜め込むのが常の私は、8月31日にまとめて思い出を捻出していましたが・・(^_^;)
    おかげで創作の技術が身に付いてプロになれたのですから、人生とは奇なものです。

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