夜ベッドに入ると、与六がニャンと鳴いて肩をポンポン叩きにくる。要求は腕枕。布団から出した腕をまっすぐ伸ばすと、私の顔に頭をくっ付け、身体全体を委ねて眠りに入る。肩は冷えるし、デブ猫を乗せたまま寝返りを打てないのは苦しいが、私を母親と思って甘えている寝顔に文句は言えない。与六か私かどちらかの命が尽きるまで、こうして一緒に眠る日々が続くのはお互いの信頼の証である。
こんな自分と被ってしまう映画、録り溜めしたストックから昨晩見たのはケイト・ハドソン主演の「私だけのハッピー・エンディング」だ。広告代理店に勤めるマーリー(ケイト・ハドソン)は愛犬のブルドッグと暮らすキャリア・ウーマン。両親は離婚して家庭的には恵まれない人生だったが、友人たちに囲まれて幸せに暮らしている。ところが末期ガンで余命半年と分かり、宣告した主治医と恋に落ち、残された時間を精いっぱい満喫しようと明るく運命を生きていく。
いっぱい泣かされながら特に印象に残ったのは、疎遠になっていた両親との絆を復活させていく中で、母親(キャシー・ベイツ)と一緒に眠るシーン。看病をしている母親は娘が愛おしいあまり、同じベッドに添い寝して語りかける。両者の関係は娘が赤ちゃんだった頃に戻って、置き去りになっていた時間が戻ってくるのである。
このシーンを見ながら、母親はいつまで子どもと一緒に眠るのだろうと考えた。私の記憶は小学校の低学年まで。また父が帰ってこない夜、心細くて寒い夜は母の身体に巻き付くと、やんわりと抱き返してくれることが何よりもの安堵感をくれた。
私が大学生のときに両親は離婚して、母は新しい家族を作り、すっかり音信不通となってしまったけれど、あの頃のぬくもりを覚えていてくれるだろうか。冬の夜にベッドで縮こまると、どうしても思い出せない母の匂いや体温が懐かしくなる。
隣りでクークー寝息を立てている与六の頭に頬をつけて、一緒にママの夢でも見ましょうか。君がうちの子になったのは生後3か月の時だったっけ? 私も仔猫になった気分のベッドタイムは、おぼろげな思い出の共有である。
コメント
i save you.
できると思う。
的は逗子の素浪人様
人は大人になるほど、もっと触れ合うべきなんじゃと思っています。
恥も外聞も墓場には持っていけませんからね。責任を終えれば、誰が何を言おうと自分の思うがままで良いのです。