ザ・タイガース復活コンサートに見る青春

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パジャマに着替えた深夜、何気にNHK BSを見ていたら、楽器を抱えた白髪頭のおじさんたちがステージに登場した。昭和の時代、グループサウンズブームの頂点にいたザ・タイガース。昨年の12月に東京ドームで行われた再結成コンサートの録画放送である。

1967年にデビューして44年ぶりのオリジナルメンバー。加橋かつみさんは都内の某喫茶店でよく拝見したので雰囲気に違和感はないが、白いあごひげを伸ばした沢田研二さんをはじめとする皆の変貌ぶりに驚いた。青春が蘇るというよりはタイムラグがありすぎて、本当にこの人たちがタイガースなのかと、帰還後の浦島太郎を見た気分なのだ。

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しかし実力は衰えていない。2曲目の「サティスファクション」で注目したのが岸部一徳さん。オールマイティな演技を見せる名俳優のイメージしかなく、まさかベーシストとして現役であるとは思わなかった。ドラマーの瞳みのるさんも最年長にして最も若々しくハイテンションで、自分の持ち場ではステージを隅々まで走って客席を盛り上げる。一緒に拳を振り上げる客席のファンたちもどれだけ元気なことか、これこそ日本の中核を成す団塊の世代パワーである。

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タイガースはストーンズのように長期の活動を続けてきたグループに思えたが、1967年に「僕のマリー」でデビューしてから1971年の武道館コンサートで解散するまで、たったの4年間。経験を積んで大人になった今でこそ1年はあっという間に過ぎてしまうが、当時の彼らにとっては毎日を燃焼して生きた長い長い4年間だったと思える。

栄光の時代を噛みしめるがごとく「イエスタデイ」を歌った岸部シローさんは車椅子で登場。自己破産のあとに脳内出血で倒れ、奥さんも亡くし、闘病生活を続けながら今は老人ホーム暮らしというが、後遺症のせいで動きづらい唇からこぼれてくる歌声は音程が正確で、歌詞もしっかりと覚えている。取り囲んで励ましながら楽器を弾きコーラスをするメンバーたちには、久しぶりにライトを浴びた弟に対して感無量な一曲だったであろう。

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びっしり埋まった客席を見ていると、自分も小娘だった時代が蘇る。追っかけをしていたのはアメリカのロックバンド「シカゴ」で、来日公演のチケットを買うために初めて一人で東京へ行った。2月に武道館で行われたコンサートには、表参道のミルクで買ってもらったブラウスをコートもなしに着て行き、憧れのロバート・ラムに見てもらえるかと通路に出て踊ったものだ。穴を掘って埋めたいほど恥ずかしい思い出だけど、歳をとって認知症になったとしても覚えているに違いない。

「流行歌」という言葉は時代遅れ。好きなアーティスト、好きな歌はいつまでも現役で心の中に生きている。

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