パラサイト虐待の現実

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NHKの特集番組で『パラサイト虐待』という言葉を聞いた。
不自由な身体で高齢化した親に対して、同居している子供が暴力を振るうこと。
ただし「子供」とは言っても、年齢は40歳代から60歳代の未婚男女が殆どだという。

10万円の年金で家賃・生活費・医療費を賄っている母娘。
転んで足が不自由になった母のため、仕事を辞めて介護に専念する40歳代の娘は、認知症が進んでいく親が許せずに「しっかりしてよ!」と殴る蹴るを繰り返す。

80歳代の親を介護する60歳代の息子。料理も洗濯も満足に出来ず、「今から親を殺したい」と切羽詰った電話をかけまくる。

月の生活費が4万5千円の親から、煙草代・酒代を先取りする息子。
デイケアサービスからの通報で追い出されても、ラーメンが食べたいんだと千円札を無心しに来る。父は栄養失調で墓場寸前な状態でいるのに、子供の喜ぶ顔が見たい。

子育ての失敗、親離れできない子供、相互依存、行政の不備。
パラサイト虐待の原因はいろいろあれど、どこにも悪意はないのが悲しい。
原因は、愛しているからこそなのだ。

小さな核家族の中で、自分を守り育ててきてくれた親こそはスーパーマン。
年老いて病気になり、しかも頭がボケていくなんてことは有り得ない。
「しっかりしてよ、お母さん!」
お漏らししたお尻を叩き、その瞬間に正気に戻ってくれることを願う。

 

夢であって欲しい気持ちは私も同じ。
何度かここに書いたが、半身不随で要介護度4の父は、介護施設にお世話になっている。
ある日夕食の手助けをした後に、洗面台で入れ歯を外して欲しいと頼まれた。
入れ歯に触るのは初めてなので四苦八苦していたら、
「イヤか? 汚いよな・・」
悲しそうな目が私を見上げていた。
あんなにワンマンで格好良かった父とは別人だった。

 

その晩、夢の中でよみがえった遠い記憶。
小学校から帰った午後、飼っていた文鳥が冷たくなっていた。
「死」というものを認めたくなくて、硬直した身体を泣きながら何度も床に叩き付けた。もしかしたら息を吹き返すのではないかと、万に一つの奇跡を望んだからだ。

大丈夫? 後戻りできない人生で、自分を追い込んでいる「子供」たち。
それでも手を差し出せば、答えはきっと近くにあると信じていて欲しい。
あなたも私も、まだまだ先は長い。

コメント

  1. しのぶ より:

    はじめまして。
    毎日訪問させて頂いてます。

    今日は涙で画面がかすんでしまいました・・・。

    ゆり子さんの豊かな感受性と柔らかさと強さは貴重ですね。それとユーモアのセンスも!

  2. yuris22 より:

    しのぶ様

    いらっしゃいませ(^_^)
    毎日読んでくださってるとは感謝感激です!

    「そこまで正直に自分のことを書かなくてもいいのに」と周りから
    言われもしますが、嘘はつけない性格なのです。
    その日その日の感情を文章に転換することで、明日への活力にして
    いるのかもしれません。

    ブログを始めてまだ1年未満。
    夢は2年、3年と続けて、今日と同じ日に何をしていたかを見ること
    です。成長していればいいのだけれど・・。

  3. Grayman2006 より:

    現実の世相は、多くの日本人を悲しませています。
    『 Japan as No.1 』 と称えられ、世界経済のベンチマークと評価された日本が、
    失われた10年を経て…、こんなにも疲弊し貧窮するなんて…。

    何故かわたくしには、
    現代の世相が、山上憶良の「貧窮問答歌の世界」に重なります。
    日本人が有していた徳目(勤勉・節約)は何処に…、I’ll boost your rank through my click. 

  4. yuris22 より:

    Grayman2006様

    『世間を憂しとやさしと思へども 飛び立ちかねつ鳥にしあらねば』

    「貧窮問答歌」の最後の部分に、自らを幽閉している日本人を感じます。
    弱者たちは誰にも相談する術も、飛び出す術も知らなず、ただ命の火を
    繋いでいるだけ。

    映画「ALWAYS」のような生きることがドラマであった時代はもう戻って
    来ないのでしょうか。

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