父が入居している介護施設に、年間ケアプランの説明を聞きに行った。同じ文章を去年もブログに書いたなと思いながら、一年があっという間に過ぎていくことに驚く。
小坪の「魚佐次」で中トロのサクを買い、食べやすい大きさにカット。
「旨いマグロの刺身が食べたいなあ」と言う父が楽しみに待っているお土産だ。3時のおやつに間に合うかな。
面談表を広げてのミーティングが終わると、「おーいおーい」と声が聞こえる。
待ちかねた父が私の名を呼ぶ声である。
テーブルに行こうねと、スタッフにお願いしてベッドから車椅子に移してもらうと、父は何度も「ありがとう」を繰り返す。
身体の向きを変えてもらうと「ありがとう」。
着衣の乱れを直してもらうと「ありがとう」。
筋力が弱り震える手でお刺身を口に運びながら「旨いなあ、ありがとう」。
アルツハイマーの入居者が傍に寄って来れば「こんにちは、ありがとう」。
ケアステーションの中にいるスタッフたちの名前を呼び続けて、「どうなさいまいしたか?」と聞かれたら「○○さん、いつもありがとう」。
経営者時代の癖が残っているのか、わざわざ呼びつけて「ありがとう」には皆で大笑いしてしまう。
仕事をしていた頃、お客様に何千回何万回と頭を下げて言った言葉。
物忘れがどんどん酷くなっていく中で、最後まで記憶に残っている言葉。
脳卒中で倒れてから4年が過ぎたが、今でも父を口汚く罵ったり陥れようとする輩は多い。でもきっとそんな人たちに対しても、父は「ありがとう」と言うだろう。
今さらながら、なんて素敵な言葉なんだろうと目からウロコが落ちた。
私を育ててくれた親に感謝して「ありがとう」を引き継いでいかなくちゃ。
いつも励ましてくれる友人たちに感謝して「ありがとう」を広げていかなくちゃ。
口に出して、こんなに心地よく響く言葉は他にない。
コメント
告白します! 『「ありがとう」はすべて」と…。
私が2ヶ月余りベッド上で日々の生活を過ごさなければならなかったとき、気の合わない看護師がいました。
でもある日から毎晩看護師の顔を浮かべつつ「ありがとうございます」と何度か感謝の祈りをして寝るようにしまた。
すると私が転院するとき、何とその看護師が、一番の笑顔で「がんばってね!」と送ってくれました。
『「ありがとう」は心、神様の言葉』と言う体験をさせて頂きました。ありがとうございます。
素浪人様
いい話をありがとう!
心は温かいのに自分を表現するのが下手な人がいます。たぶん照れくさいのかな。
どうせ自分なんか・・と思っている人に対してこそ、「ありがとう」を言ってあげたい。
恋人の「愛しているよ」と同じくらい、心を薔薇色にしてあげられる言葉だと思います。
言霊は日本の文化ですから大事ですね。
素直な気持ちがこもっていればすがすがしいです。
養賢杜様
祖父母のお墓が家から近いので、毎週お参りに行っています。
お経は唱えられないけれど、口に出す言葉は「守ってくれてありがとう」。
空に通じるのか、私の周りには良いことが続きます。
言霊はポジティブになれるパワーですね。