世界の水不足と東京マラソン

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今年も東京マラソンに、ドリンク班のボランティアとして参加することになった。折り返し地点となる品川駅前・15km給水所で、ミネラルウォーターを提供する係である。今までは2月の寒い時期(初回は凍えるような雨)の開催だったが、助かることに今年は3月22日。スタッフウェアの下に着込む防寒着が少なくて済みそうだ。

しかし一つ気になる事がある。リーダーミーティングで説明を聞いたところでは、暖かくなった分、ドリンクの数が増えるというのだ。朝のうちにトラックで運ばれてくるだけでは足りない恐れがあり、後続の補給も考えているらしい。
初年度はクリスタルガイザーのキャップを開けて、ペットボトルごとランナーに提供していたが、2年目からは紙コップに注ぐことになった。これが手間のかかる作業で、太陽が照りつけるほど、そして疲れたランナーが多いほど、需要に供給が追いつかなくなる。

品川ブロックで用意されるペットボトル(水1リットル)の量は、1箱12本入り×380箱、合計4,560本。クリスタルガイザーのボトルはキャップが固いので、最初のうちに数多く開けておく必要が出てくるが、心配なのは万が一余った場合だ。未使用のボトルは最後に回収されても、開栓済みは全て中身を捨てなくてはならない。初回はこの作業で靴がビショ濡れになり、足の指が自分のものとは思えない冷たさになった。

でも私が気にしているのはもっと大きなこと。貴重な飲料水を無駄遣いして良いのかということである。1995年に世界銀行副総裁だったセラゲルディン氏は「20世紀は石油をめぐる紛争が、21世紀は水をめぐる紛争になるだろう」と予告し、既に世界の1/3が水不足の状態に陥っている。

環境・水保全の専門家に教えてもらったこと。地球は水の星と言っても、その97.5%は塩水で2.5%が淡水。しかも淡水の殆どは南極北極の氷などで、私たちが利用できるのは全体の0.01%だという。更にそこから世界の水利用は69%が農業、21%が工業、やっと残りの10%が生活水なのだ。英慈善団体ウオーターエイドによれば、衛生的な水が手に入らないことが原因の病気で毎日5,000人の子供が死んでいくという。

1人1万円の参加費で、今年は3万5千人が走る東京マラソン。東京都は運営費に15億円かけているそうだが、その中でミネラルウォーターが占める割合は微々たるものだろう(というか、スポンサーの好意に甘えているかも)。しかし世界的レベルで危機が迫っている資源を、文字通り「湯水のごとく」使って良いものだろうか。

南アジアで最も貧しい国ネパールでは、1人当たりの国民総所得が1年につき3万円。汚染された井戸水を飲んでポリオに罹る子どもたちも珍しくない。それでも喉の乾きに茶色い泥水を飲む。

「頑張ってー!」。紙コップを差し出してランナーを応援しながら、今年の東京マラソンは、たぶん複雑な気持ちが拭い去れないボランティアになるだろう。

コメント

  1. 渡辺孝子 より:

    日本がまだ水を買って飲む習慣がなかった頃、大自然の宝庫・アラスカから氷河の氷や水を輸送し、日本で販売した経験がありますが、太古の自然を謳い文句に商売をすることに疑問をもち、販売ルートを確立して3年で手を引きました。今でもコンビニや百貨店などで売られているのを見ると、無理やり養子に出した我が子をみるような気持ちになります。水道をひねればきれいな水を飲むことができるのに、遠くから多大な資金を投入し、輸送の段階でエネルギーを消費し、自然環境にも多くの影響を与えてまでするビジネスだったのかと、矛盾だらけの世の中に憂いております。
    先日みた「もしも世界が100人の村だったら」で泥水を飲んで飢えをしのぐ子供たちに、学ばせてもらいました。

  2. yuris22 より:

    渡辺孝子様

    1本100円のペットボトルで販売されている水道水「東京水」は、まだ飲んだことがないのですが、市販のミネラルウォーターよりも美味いしいと評判だそうですね。
    水道水が不味いという固定観念は、昭和40~50年代の名残り。川に生活排水や工場排水が流れ込んで水質を悪化させていた頃の記憶が残っているからでしょう。
    今の子どもたちには私たち大人が率先して「水道水は飲み水だ」と教えなくちゃいけませんよね。そして、水はタダではないということも。校庭で蛇口から直接美味しい水を飲めるなんて、世界でもこんな恵まれた国はないと思います。

  3. たけぞう より:

    お台場の水道博物館に行くと、帰りにペットボトル入りの「東京水道水」がもらえます。飲んでみましたけど、全然問題なかったですよ。そもそも僕は田舎者なのもあって、東京人がミネラルウォーターに頼ることに違和感があります。僕にしてみれば、水を市価の(水道水)の何十倍の値段で販売したいメーカーの「思うつぼ」だと思います。

    東京水道水といっても、場所やマンションのタンクの管理状態によってえらく味が違うように思います。僕の田舎の古い水道管の水ともまた違います。でも水道管に穴の開いていない、ふつうに管理できている水なら僕は問題ないと思いますが。日本の水道水を飲んでいて体を壊した人はいないでしょう。貧しい国の水道事情を考えれば、天国ですよ。

    東京マラソンは、石原さん自慢の東京水道水でやればいいと思うのですが、クリスタルカイザーが「広告費を払うから」というので、宣伝のために無駄を承知でばらまいているのでしょう。

    先進国の身勝手な発想ですね。

  4. 素浪人 より:

    拙者も、「紙コップ」「ペットボトル」とかは大変に気になりますね。
    では、こういうにはどうでしょうか…。
    1.給水は大きなタンクでする。(たぶん今までの経験で、大体の量は見当がつくはず)
    2.コップ持参のランナーは参加費、又は給水待ち時間を見込んでタイムを**%OFFされる。
    3.うまく給水量をコントロールできたポイントは、残りボトルと紙コップ量に応じて、何か都からご褒美がある(ビールかも)。
    みんなでカッコエコ走ろう!

    3月は日々の気候の変化が激しいので、「暑ければ脱ぐ(全部はだめよ!)」ぐらいが良いと思います。

  5. yuris22 より:

    たけぞう様

    こんなに「まともな」水に恵まれている日本で、どうしてマラソンでペットボトル詰めのミネラルウォーターを使うのか不思議でした。提供元の0ベバレジが広告費から払うにしろ、そのお金を汚れた水を飲まざるを得ない国へ振り分けたほうが、よほどの宣伝効果があがると思うのですけれどね。「木を見て森を見ず」の典型じゃないでしょうか。

  6. yuris22 より:

    素浪人様

    斬新なアイデア、ありがとうございます。願わくば運営元・笹川スポーツ財団の目にとまりますように。
    去年も2月とは言えど、お天気が良くて汗をかきました。スタッフウェアは洗わずにクローゼットに吊るしてありますが、思い出の臭い(笑)がしてるかもしれません。

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