擬態は昆虫だけじゃない

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弱い雨が時折ぱらついて、車で走る両脇には湿った落ち葉が細いラインを作っている。
春にはピンク色のトンネルだった桜並木も、黄色の色彩が日々に増してきた。

コンビニに寄ろうと車から降り、ふと壁を見たら枯葉が貼り付いているのに気付いた。
周りは桜ばかりなのに、イチョウの木が近くにあったっけ?
首都圏のイチョウが色づくのは11月の終りじゃないかな?

指を近づけると、風も無いのに葉っぱがヒラヒラと舞い始めた。しかも自分の意思を持って飛んでいる。

擬態! 昆虫名はわからなけれど、蛾か蝶なのは確かだ。
やがてまた壁にとまったチャンスを得て、バッグから取り出したデジカメで接写してみた。

擬態1
擬態2

『擬態とは、昆虫やほかの生き物がその姿を風景に紛れさせたり、ほかの生き物に似せたりすることで、自分が誰でどこにいるのかをわからなくさせるものです。「カムフラージュ」と呼ばれることもあります。』
(All About 昆虫の擬態より引用)

上手に枯葉を演じても、白い壁がバックでは目立ちすぎる。擬態になってないよね、君。
また手を伸ばすと慌てて近くの樹木に隠れて、今度こそ外敵から身を隠した。

買い物を終え、また車に乗り込んで想像を巡らす。人間も擬態をするのだろうか?
もしかしたら女は「化粧」で擬態しているかも。
もしかしたら男は「筋肉」で擬態しているかも。

それは敵から身を守るためか、相手の隙をついて喰らいつくためか、それとも愛し合うためか。

小さなイチョウの葉「もどき」のおかげで、悩みがまた一つ増えた秋である。

コメント

  1. Willow Road より:

    人間の場合は社会的擬態みたいなものは確実にしているのでしょうね。なんの矜持もプリンシプルがなくても周りと同じスーツに身を包みホワイトカラーの森に生息。流行と、その場の空気に合わせることが目的の装い。筋肉もある意味強さを必要とするジャングルでの擬態かもしれません。

  2. yuris22 より:

    Willow Road様

    思えば人間ほど、様々な擬態のテクニックを持っている動物は他にいませんよね。
    ファッションだけでなく表情や声でも擬態可能。
    本当の姿は誰が知っているんでしょう・・。

  3. Grayman2006 より:

    秋のテーマを扱いながら、
    春の小川の水の流れのように、さらさらと流れる
    「美しいエッセイ」に魅せられます。

    “黄葉”⇒“ギタイ”⇒“人間もギタイ?”⇒軽く“悩みが増えた”で閉じる♪
    お見事な展開で、
    何の違和感もなく、スーッと読むことが出来て、鮮明な情景が頭に浮かんできます。

    今日も楽しませて頂きました。感謝です。
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  4. tsune2 より:

    「擬態という選択をする生き方がある」
    選択って何でしょうね。
    人も生存のための進化で動植物と同じように
    擬態を選択しだしたのかな。

  5. 髪結いの亭主 より:

    この歳になり、
    やっと「与えられた自分を素直に生きるべき」
    と悟りました。

    結局、私は「与えられた自分」しか生きられません。
    「私」と「自分」の言葉の違いが解りませんが・・・

    とにかく「今の自分を好き」になりたい・・・

    「テーマはずれ」でしたら削除ください。
    失礼しました。

  6. yuris22 より:

    Grayman2006様

    特に起承転結を考えるわけでなく、想いのままに綴っている文章です。
    こうして分析して頂けると、あながち私の物書き人生は間違っていな
    かったんだとホッとしました。

    言葉を紡ぐことが、今は何より楽しい日課です。

  7. yuris22 より:

    tsune2様

    今夜は新橋の交差点で、ぼんやりと人の流れを見ていました。
    青信号を待ち、歩く速度も一緒で、仕事のための服を着ている。
    ルールに従い、目立たない事が都会人の擬態なのかもしれません。

  8. yuris22 より:

    髪結いの亭主様

    与えられた人生・・、それは最初は親から与えられた「生」でしたよね。

    物心ついた後を能動的にどう生きるか。
    怪我したくないなら、見識者から与えられた情報に従うのが無難なのでしょう。
    それを人は「運命」と呼ぶのかもしれません。

    一度しかない短い人生。愛おしい人生。
    それは自分が切り開くもの。
    他人や運命なんかに左右されたくないと思います。

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