キリギリスに酔った夜

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高校3年生の冬。遊びほうけていた私は、周囲を見て大変なことに気づく。
クラスメートはみんな受験勉強の追い込みに入っているのだ。入試まであと1ヶ月もないのに、今から教科書を広げて間に合うのだろうか。
絶望感に浸っているとハッとひらめく。なあんだ、私ってもう大人じゃないの!

以上は夢の中の出来事。
大学へは推薦で進学したため受験勉強の経験はないのだが、実際に夏休みの宿題にしても、原稿の締め切りにしても、ぎりぎりまで引き伸ばす怠け者である。

あれは忘れもしない、小学校5年の8月31日だった。
朝から猛スピードで算数のドリルを解き、国語の読書感想文を書き、旅の思い出の水彩画を描き、最後に理科の宿題を残すのみまで漕ぎつけた。

課題は「観察日記」だって?
こんな真夜中に何を観察したらいいのか家捜しをしたところ、虫かごを発見。裏の土手で捉まえてきたキリギリスを飼っている。
よーし、記憶と想像力とで1ヶ月の観察日記を仕立てよう。ベッドの枕元に虫かごを置き、寝転がりながらキリギリスを色鉛筆でスケッチしていった。

風の通らない蒸し暑い室内に、キリギリスと餌のキュウリの青くさい匂いが充満していく。
奴は電気スタンドの明かりを昼と勘違いしたのか『ギ~スチョン』と鳴き始め、手足をスリスリ、羽根を震わせるほどにますます臭くなっていく。

き、気持ち悪い・・・。
車酔いも船酔いもしたことのない私が、虫酔いして吐きまくった初めての体験だった。

そしてあくる朝は、フラフラと気が遠くなりそうな体調で宿題を提出。
ちなみに当時は学級委員長であり、宿題を一夜漬けで片付けたなんて、口が裂けても言えない立場であった。

夏の匂いといえばキリギリス。
これは夢ではない、今だから言えるノンフィクションである。

コメント

  1. より:

    凄い集中力ですね!24時間戦ったんですね。グラスホッパーとの素敵な夏休みの最終日

  2. こまちゃん より:

    大好きだった単車を降りてから、暫く夢に出ました。
    タバコをやめてからはタバコの夢を見ますw

    若かりしゆりさんを酔わせたのは本物のキリギリスか、
    はたまたグラスホッパーか!w
    (リキュールベースのショート・カクテル)

  3. yuris22 より:

    m様

    中学生の時は、9月1日の明け方に書いた作文で、校内作文コンクールに優勝したことがあります。
    思いっきり雑誌のパクリだったような記憶が・・(・_・;)

  4. yuris22 より:

    こまちゃん

    お酒に酔うんだったら何でもオッケーなんですけどね。
    当時はしばらくの間、キュウリも嫌いになりました。

  5. 詩人たそがれ より:

    このところ、連続で笑ってます・・・すいません。
    You are my hope!

    すごいですね、酒で吐かず
    >「虫酔いして吐きまくった」
    ですか・・・

    才能の証明ですね。(感動する処が違うか)

  6. yuris22 より:

    詩人たそがれ様

    キリギリスが発するフェロモン。
    微小なものでしょうけれど、子供ながらに感じたんでしょうね。

    今度スズムシで試してみます。

  7. 亀吉 より:

    キリギリス・・・だめ、スイカ・・・だめ。
    夏女のイメージが強かったんだけどねぇ・・・。

  8. yuris22 より:

    亀吉様

    ついでに恥を晒しますが、基本的には泳げません。
    クロールは息継ぎしない・平泳ぎは同じ場所に留まる自信があります(^_^)

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