そのまた草鞋を作る人

広告

昨日は午後3時に書き物を中断。汚れてもいい服装に着替え、マンションの理事会の仕事に出かけた。緑と花のお世話係、植栽委員会のお勤め。敷地内に点在するフラワーポットの花が枯れてきたので、ゼラニウム・アメリカーナ30株を植え替えることになった。

単に枯れたのを引き抜いて、新しいのを植えるだけではない。根切り虫ことコガネムシの幼虫を退治する殺虫剤を撒き、花を元気に咲かせる肥料を与え、土をスコップでかき回す作業が必要なのだ。それから手で穴を掘り、ゼラニウムの株をギュッと押し込んで固める。

近所の花屋さんの指導を受けながら、にわか植木屋は大忙し。ゴロゴロと台車を押して鉢から鉢へと移動する。ビニール手袋をしていても手や爪は土だらけになり、掘り返せば現れる幼虫に叫び声を上げながら、植え替え終了までに1鉢15分はかかってしまう。中腰の姿勢に足腰の痛みが増していくけれど、枯れていた鉢が真っ赤な花鉢に変身していくマジックが嬉しい。

ゼラニウムアメリカーナ1
ゼラニウムアメリカーナ2
ゼラニウムアメリカーナ3

そこへ通りかかった若い奥さんから「何、この汚い人たち」みたいな視線。庭掃除に雇われている労働者と思ったのか、鼻をツンと高くして通り過ぎていく。
こら、似非セレブ!こっちも同じマンションの住人なんだよ。ボランティアでやってるんだから、お疲れさまぐらい言えないの?・・と、怒鳴りたくなったのを抑えて作業に戻る。それと同時に、去年までは誰がこうして花を植えてくれていたのだろうと、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

駕籠に乗る人担ぐ人そのまた草鞋を作る人(かごにのるひと かぐつひと そのまたわらじをつくるひと)。
私たちの生活は見えない手によって支えられている。綺麗な部屋に住んでいられるのも、ゴミを収集してくれる人のおかげだ。夜道を安心して歩けるのも、切れた電灯の玉を取り替えてくれる人のおかげだ。
人生も同じこと。生まれてオギャーと声をあげるのも、昼夜かまわず取り上げてくれる人のおかげだ。死して土に帰るのも、火葬場で炉の管理をしてくれる人のおかげだ。何千何万本の手が人間一人を数十年にわたり守り続けるのだ。

「おはようございます」「ありがとうございます」「お疲れ様です」
縁の下の力持ちに大きな声で感謝の意を伝えることは、人としての礼儀である。ねえねえ若いお母さん、子供はあなたの真似をして育つんですよ。

コメント

  1. 詩笛たつき より:

    何時も素敵だなーと思いながら読ませていただいていますo(^-^)o

  2. yuris22 より:

    詩笛たつき様

    いらっしゃいませ(^^)
    ブログを読ませていただきました。さすが宝塚歌劇ご出身、華やかな世界に通じていらっしゃるのを羨ましく思います。これからも交流させてくださいね。

// この部分にあったコメント表示部分を削除しました
タイトルとURLをコピーしました