心が薄ら寒くなる乗客のマナー

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日曜日の夕方、下りの東海道線に乗った時のこと。ホームに入ってきた電車はほぼ満席で、大船駅から乗った人の大半は、あぶれて立っていた。その中に腰の曲がった老人が1人、白髪のおばあさんがロングシートの吊革に手を伸ばし、ヨロヨロとしている。

彼女の前には携帯をいじる若者が3人。大学生か、20代の社会人かの風貌だ。画面を食い入るように見つめ、お婆さんが前に立っているのを気づかない姿勢を通している。

その時、ドアスペースを挟んで離れた席から「こっち」という大きな声がした。手招きしているのはラッパー風の若い黒人男性。大きな身体をすぼめ、おばあさんが怖がらないようニコニコと微笑みながら席を譲ったのである。

先ほどの若者たちは厄介払いしたぜとでも言うように、携帯をいじる手を止め、そっぽを向いている。しかも降りたのは隣の駅。一駅ぐらいなら何故、席を譲ろうという気にならなかったのだろう。

昨夜YONIURI ONLINEの発言小町を見てたら、「目の前のお年寄りに席を譲らない若者に注意した私はおかしいの? 」というトピが目に留まった。トピ主は大学生。ヨボヨボのおばあちゃんが座れずにいて、聞けば終点の駅まで行くという。イヤホンで音楽を聴いている前の若者に席を譲ってあげるよう声をかけたら、彼女を睨みつけてプイッと下を向いた。おばあちゃんは「大丈夫」と言ってくれたけれど、私はどうすれば良かったのですか?という投げかけだ。

驚いたのはこの発言に対するレスだ。トピ主への賛同が半分、批判も半分。押し付けがましい、第三者を巻き込む権利はない、優先席付近にいない方が悪い、他人にマナーを強制するのはおかしい、若者でも体調不良かもしれない、暴力を振るわれる可能性もある等々、トピ主を叩くレスが並んでいる。お年寄りは普段運動しないのだから、外出時には立ったり歩いたりする方が長寿の秘訣だとまで豪語する意見も。

日曜日に私が見た乗客たちは、みんな「座る」理由付けをこしらえながら、おばあさんを見て見ぬふりをしたのだろうか。良心の呵責は残らないのだろうか。直球を投げればアウト。ずいぶんと七面倒くさい世の中になったものだ。

席を譲った後、おばあさんが気にしないよう反対側の吊革につかまっていた黒人男性。みんな横顔をチラチラ盗み見ている。日本人はマナーに関しても後進国になっていく気がして、心が薄ら寒くなる夏の電車だった。

コメント

  1. しのぶ より:

    先日、バスの中でぐずる赤ちゃんに若いお母さんの声。

    「見てごらん、みんなバスの中では静かにしているでしょ?あなたもバスの中では静かにしなければいけないのよ」

    バスストップで降りる親子をチラッとみると、黒人の若いお母さんと言葉もまだ理解できないような赤ちゃんでした。

    この国ではこんな風にしつけをするのかと、ちょっと感動しました。

    日本のお母さんもガンバレ!!

  2. yuris22 より:

    しのぶ様

    公共の乗り物では、子供は立っていなさいと躾ける国もあれば、日本のように真っ先に座らせる国もありますね。そうやって座った子のたいていはお行儀が悪い。
    「ほら、隣のおばさんが怒ってるわよ」と注意する親にもムカつきますが・・。

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