アンドロイドの恋人はいらない

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実在の若い女性そっくりに製作された遠隔操作型アンドロイド(人間型ロボット)が来月から販売を開始するという。モデルの女性と並んだ「ジェミノイドF」の画像を見て、子供の頃は映画やアニメの世界にしかなかった近未来が、ついに現実になったことに驚いた。

ニュース記事には「科学館の受付などの利用が考えられ、製作会社が、注文に応じて同じタイプを一体約1000万円で来月から販売する」と書かれているが、やがては自分と同じ顔のロボットを特注できる日も遠くないだろう。しかし一方で、科学の進歩は神の領域を侵していないだろうかと不安になる。

もしも愛する人が天国へ旅立った時、その人のアンドロイドを製作するかどうかだ。顔は元気な頃のままで、いつまでも歳を取らない瓜二つのロボット。学習機能で本人の癖を覚えさせたり、懐かしい声で会話ができたり、サーモスタットで体温を保ち一緒に眠ることも出来るかもしれない。しかしそれだけでは物足りなくなり、喜怒哀楽の感情を求め、愛情を求めるようになった時は?「不可能です」という壁が立ちはだかった時、どれほどの絶望が頭を叩くだろう。

人間の法則とは、生まれた時から死に向かっていることだ。どんなタフな男でも、どんな美人でも、やがて皺が寄って腰が曲がり、棺の中に納められる日がやってくる。悲しい行進をしていると知りながら、後から続いてくる人たちへ「お先にどうぞ」とは言えない。

科学が神の手に近くなり、人間同様のアンドロイドが可能になっても、私は思い出の人を注文しないと思う。何故なら瓜二つに形作られたものは変えられない過去であり、未来ではないからだ。過去に囚われて生きていくのは、前進が定めである人間の法則に反している。過去はたまにアルバムの写真を眺めるだけでいい。

いつか私も年老いて重たくなった骸を脱ぎ捨て、先に旅たった人たちの魂がいる場所へと向かう。寿命を全うして現世を卒業すれば、セカンドステージが待っている。「いままで」より「いまから」がどれだけ楽しくて大切か、溢れんばかりの月日をこれからクリアしていかなくちゃね。

コメント

  1. こまちゃん より:

    「限りある命だから」「たった一度の人生だから」
    中村天風さんとか、銀河鉄道999の世界ですねw
    永遠に魅力を感じる人も多いんでしょうが
    美しいって「潔さ」の裏返しなんじゃないかなぁ。。。

  2. yuris22 より:

    こまちゃん

    「美しさ=潔さ」となると、桜の世界ですね。
    この雨で散っちゃうのかなあ。酒盛りは充分にしましたが・・(笑)

  3. 的は逗子の素浪人 より:

    現代版からくり人形ですね。
    「神の領域」…私の生きている内には無いでしょう。

  4. yuris22 より:

    的は逗子の素浪人様

    私の代わりに働いてくれるアンドロイドだったら欲しいかもしれませんけどね。飲みいく代わりは要りませんけど(笑)

  5. 猫太郎 より:

    アンドロイドもクローンもいらない!
    神の領域に手をつけると罰があたる気がします。
    想い出を大切にして前向いて生々しく生きたいなぁ!

  6. marie より:

    この記事を見た時に2年前くらいのドラマで速水もこみちが演じた「恋人型ロボット」を思い出しました。
    まぁ、あれはコメディで笑いを取るドラマでしたが(笑)
    あと、以前に同じ職場の男性が言ってたんですが、夜勤明けと帰りと通る電話ボックスにいつも人影が見えてすごく不信に思いそばに行ってみたら、な、なんとダッチワイフが公衆電話を覆うように置かれてたそうです。
    もう、みんな笑いました。
    今から12年前の話でした。

  7. yuris22 より:

    猫太郎様

    思い出って不思議なもので、心の中でいつまでも温かいんですよ。一緒に生きているってことなんでしょうね。

  8. yuris22 より:

    marie様

    ダッチワイフといえば、いたずら好きな友人がよく車の助手席に乗せていたという話を聞きました。信号待ちすると、隣の車がギョッとした顔をするのが楽しかったそうです。交通検問で警官に止められた時は、かなりしつこく職務質問されたそうですが・・(笑)

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