週に一回、白いワゴンに乗った王子様がお土産を届けにやってくる。「これ、ちょっとだけど」と、はにかみながら差し出してくれるのは、カゴいっぱいのジャガイモ、玉ねぎ、レッドオニオン・・。畑から引き抜いてきたばかりの三浦野菜だ。
建設会社の跡取りという地位を二十代後半で投げ打って、彼が始めたのは三浦半島での農業。自分が食べたい味のする野菜を作りたいと、自然肥料を試行錯誤して組み合わせながら、無農薬栽培を推し進めてきた。メロンやスイカには自分の名前をもじったブランド名をつけ、大根、白菜、玉ねぎ、人参、トマト、レタス・・、四季折々の三浦野菜を作っている。
履きこんだジーンズに仕立ての良い鎌倉シャツ、紺のジャケットを羽織ったお百姓さんは、寡黙だけれど裏表のないまっすぐな人柄。
「嫌いな食べ物はありません。しいて言えば作り手の心がこもっていないもの」
お酒は強いのに月に数回しか飲まず、野菜と魚中心の食事にはご飯を数杯お代わりする。
逗子にバールの開店を控えたチーム357で、昨夜は戴いた野菜を試食してみた。
電子レンジでチン!してバターを乗せたジャガイモは、品の良い甘さでジューシー。オニオンスライスは水にさらさなくても、そのままドレッシングなしで食べられる優しい味だ。
広大な三浦の畑で収穫した野菜を近所に配れば、お返しに新鮮な魚が届く。一昨年建て替えた家も、庭の樫の木を10年寝かして作ったという。毎日眉間にシワを寄せてパソコンに向かっている私とは段違い。憧れの自給自足生活である。
昨夜戴いた野菜をデジカメで撮ったあと、マイピクチャに「三浦野菜」のフォルダを作った。この中にこれから蓄えられていく旬の野菜の画像が楽しみである。7月の上旬には一番生りのメロンとスイカをお土産に持ってきてくれるそうな。思わず顔がニンマリする。
深夜12時。自宅まで送ってもらい、「じゃあまたね」と手を振った。野菜の国からやってくる王子様が、待ち遠しくなる逗子のシンデレラである。
コメント
ガラスの靴は357に忘れたの?
的は逗子の素浪人様
357はカジュアルな店なので、舞踏会はできません。
しかもガラスの靴よりはビーサンです。