男を見極める行きつけの店

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飲食店を特集した東京カレンダー8月号で、『すべてが秘密です。あの人が“この店”に通う理由』を読んでいたら、秋元康さんの一言が目に留まった。
「彼には行きつけの店に連れて行って貰うのが、男を見極める最善の策です」
内装はゴージャスなのに味は大したことない店、並んで待って入る店・・、なぜ彼がその店にこだわるのかで内面が見えてくるという。

名前は出せないが、ある著名人に教えて戴いた浜松町の店。夜9時過ぎに直接その店で待ち合わせることになったのだが、口ぶりではお洒落していくような雰囲気ではない。
「おばちゃんがやってる小さい居酒屋なんだけど、わかりにくい場所にあってね。○○って名前なんだ。駅に着いたら電話して」

さっそく浜松町の○○を食べログで検索してみると、あれっ?営業時間はランチ営業?しかも掲載されている写真は、味より量で勝負。焼き魚や丼物といった平凡な定食が、100均で売ってるような安皿に盛られている。

いつも高級料亭で接待されてるお殿様だから、プライベートは目黒のさんまみたいな店が気に入っているのかも。好意的に解釈して、カジュアルなジーンズ姿で出かけることにした。

浜松町の駅を降りて電話を入れると、店主がわざわざ迎えに来てくれるという。割烹着姿のおばちゃんを待っていると、小走りにやってきたのは白のコックコートに黒のサロンエプロンをした上品なマダム。5分ほど歩いて案内してくれた店は、小ぶりながらも洗練されたインテリアの小料理屋だった。

マダムの実家は日本酒の醸造元だそうで、予約したテーブルには檜の大枡が置かれている。柄杓ですくって飲むのはシュワシュワと細かい炭酸ガスが立った、火入れをする前の新酒。実家から届いたばかりの、今夜しか飲めない限定品だという。これに合わせて出てくる肴は、築地じこみの魚や旬の山菜、生からすみ、京風の茶碗蒸しなどが、呑兵衛ペースを見計らいながらそっと手元に置かれる。

お腹いっぱい、いい気分になった頃には2時間が経過していただろうか。既にお勘定は終わっていて、外には運転手が車を横付けして待っていた。

行きつけの店は、おばちゃんがやってる小さい居酒屋。彼からすれば、親近感を持った褒め言葉なのだろう。デザートは首都高速湾岸線の夜景。横浜ベイブリッジの大黒PAで一休み。暖かな眠気が訪れる頃に帰宅した贅沢な夜だった。

コメント

  1. marie より:

    ベイブリッジかぁ・・・

    もう、10年以上東京方面には行ってないので名前を聞くと懐かしいです。

    飲食店の決め手は新しいだけではないですよね。

    私が独身時代に通い詰めた喫茶店ですごく落ち着いて雰囲気の良いお店がありました。
    そこのマスターと奥さんもとても優しい人でした。
    ある時、いつものようにお店に行ったところ、そこのマスターが「先日、お釣りを間違えて少なくやってました。申し訳ありません」と丁寧に応対してくれました。
    当たり前のことかもしれませんが、とても感動したのを覚えています。

  2. yuris22 より:

    marie様

    飲食店の決め手は、スタッフの記憶力も大事ですね。しばらく日にちが開いても、自分のことを覚えていてくれると嬉しいものです。独りでも入れるようになります。

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