東京が嫌いになっていく

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新橋駅のエスカレーターを駆け降りて、21時13分発の久里浜行に乗った。本当は馴染みの店に寄って冷えたビールを飲みたかったが、銀座線からJR線への連絡通路を歩いているうちに、その気が失せた。

蒸し暑いホームに苛立ち、「なんやこれ!」と叫ぶ旅行者。肩がぶつかっただけで「チッ」と舌打ちするビジネスマン。携帯メールを打ちながらノロノロ歩く学生。蟻が掘った穴を黙々と歩く自己中の行進に見えてくる。

人口密度が不快指数をますます上げていく東京。隣との距離が近すぎるから、無関心という壁で防御しているのだろうか。星新一の小説に出てきそうな没個性の挿絵のようだ。この不自然な環境から一分一秒でも早く逃げたくて、横須賀線に飛び乗るためエスカレーターを駆け降りた。

逗子に着いたら、紫のアガバンサスが咲く道を歩いて帰ろう。私の足音を聞き付けた与六が、玄関に寝転んで待っているはず。植物も動物も自分のペースで呼吸している。

「まもなく逗子に到着します」のアナウンスに救われて、ドアが開けば潮まじりの懐かしい匂いがする。譲り合いながら改札口に向かう、おっとりとした顔たち。そんな田舎のような町にしか暮らせなくなった私は、第二の人生にたどり着いたのかもしれない。

コメント

  1. こまちゃん より:

    困った時の呪文「大丈夫きっと上手くいく」が効きます!
    みんなで楽しく過ごしましょうw

  2. yuris22 より:

    こまちゃん

    新橋の地下は、なぜか重たいものを貰ってしまう癖があります。いかん、いかん。
    今朝は緑に囲まれて、元気が復活しております。

  3. marie より:

    東京は旅行とか期間限定で住んではみたいですが、あの満員電車だけはイヤですね。
    19年前の夏に初めての自分の働いたご褒美でボーナス(最初だったので10万ぐらいだったと思います)で東京、横浜と遊びに行きましたが、満員電車だけは好きになれませんでした。

  4. yuris22 より:

    marie様

    満員電車。冬は着膨れでギューギューになり、夏は汗ばんだ腕がくっ付いたりするとゾゾッとしますね。
    前に大阪のラッシュ時に電車に乗ったところ、東京よりはるかに空いているのに驚きました。人間らしい空間は必要だと思います。

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