「金木犀こぼれたまりて雨止みぬ」(久保より江)
大雨の名残が点々としている散歩道に、金色の水たまりを見つけた。立ち止まって仰ぐと、緑の葉に見え隠れする香りの主。ロールプレイングゲームで宝物を見つけたような嬉しさで、また次の香りを探して歩く。
そしてゴメンナサイ。周りに誰もいないことを確かめ、背伸びして小さな枝を手折った。
「花盗人は罪にならないのよ」
子どものころに聞いた祖母の嘘がおまじないだ。
慌てて放り込んだポケットの中、ポロポロとこぼれた金色の粒。秋の花を摘んで落ち葉のお皿に乗せ、ままごと遊びをした故郷の庭が急に懐かしくなった。あの日、向かいに座っていたお客様は、青くて高い空の上で、今日の小さな罪に微笑んでいる。
コメント
私の知り合いから聞いた話ですが、その方の父親が大事に育てていた植木を庭から盗んで行った人がいたそうです。
普通なら「返せ!」とかの怒りをぶつけますよね?
あるいは見てみぬふりするとか。
ところがそのお父様は「大事に育ててくれるのならば、差し上げます。」と言ったそうです。
すごいですよね?
包容力があると言うか言葉の使い方が上手いうか・・・。
多分、その盗んでしまった方は逆に反省させられたこと
と思います。
盗みにしても、何にしても相手の非を責めるだけでは物事は解決しないものなのかもしれません。
けれども、人間は感情の塊ですから頭でわかっいてもそれを実行するのは難しいことだと。思います
そう言えば、妹のママゴトの相手をしたなぁ。
marie様
普通だったら激怒するでしょうに、人間の良心をよく分かった方なのですね。植物を好きな人に、元から悪い人はいないと思ったのでしょうか。言葉は諸刃の剣ですね。
的は逗子の素浪人様
「だだいま」「お帰りなさい」「ご飯ができてるわよ」。
お父さん役だったのかな?