命を救ってくれた不思議な縁

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本当なら今ごろは、上高地で紅葉を堪能しているはずだった。いつも春と秋には上高地帝国ホテルに宿泊する友人が、今年はスイートルームを抑えたのでいらっしゃいと誘ってくれていた。ところが数日前、その友人が倒れて緊急入院。幸いにも意識は戻り、ICUで小康状態にあるが、当然ながら旅行には出られない状況だ。

上高地には中学生の夏休みに家族旅行したことがあるのだが、楽しい記憶は残っていない。夏だというのに冷たい雨がザーザーと降り続き、梓川は水嵩を増していく。私はお腹がシクシクと痛み、薬を飲んでも治らない。観光どころではなく、旅行を切り上げて帰宅し病院に行くと、診断は急性虫垂炎。破裂直前だと言われ、すぐに手術して入院となった。

大雨が続いていた上高地では、私たちが帰った直後に崖崩れが起きて、釜トンネルは通行止めになったという。あのまま留まっていたら腹膜炎になり、ヘリコプターで搬送されていたことだろう。九死に一生とまでは言わないが、トンネル閉鎖の前に脱出できたのは不幸中の幸いだったと思う。

九星気学では、行ってはならない方位を凶方位と呼ぶ。上高地は私の住まいからは北西に当たり、今年は「本命殺」。健康面に強い打撃を与える方角だという。
ちなみに虫垂炎になった年をさかのぼって調べたら「暗剣殺」。急激な災難に見舞われ、六大凶殺の中で最も悪い方角だったようだ。

なんだか友人の入院は、私の本命殺を引き受けてくれたのでは?と気がかりである。しかし旅先で倒れなくて良かったのも不幸中の幸いだ。彼の病状からすると、命を失っていた確率が高い。

上高地は水神信仰が盛んな地だというが、海のそばに長年暮らす友人と私を、水繋がりで守ってくれたのかなと、不思議な縁を感じている。

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