三ツ星レストランを超えたご馳走

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九死に一生を得て、ICUから一般病棟に移った友人をお見舞いに行った。回復に向かうと頭に浮かぶのは食べ物のことばかりらしい。肉じゃがが食べたい、生姜焼きが食べたい等こぼしていた。
「お客さんの前で失礼だけど、晩御飯を食べていいかな」
冷蔵庫から取り出したのはヨーグルト1個だけ。朝晩1個ずつ許されているのを、「おいしいなあ」とスプーンで口に運ぶ姿は、まるで子供みたいだった。

その姿を見ながら、私は小学生のころの食卓を思い出す。何が原因だったか忘れたが、その晩は母親と喧嘩して、ハンスト抗議。目の前のカレーライスには手を付けず、ずっと下を向いたまま、頬を膨らませて座っていた。

テレビはゴールデンタイムを過ぎ、子どもには面白くない番組が淡々と流れている。お腹がすいたな、このまま夜中になるのかな、宿題はどうしようかな・・、涙がポトリポトリと手の甲に落ちていく。

ずっと黙っていた母親が冷えたカレーの皿を持って、キッチンへ行った。温かい湯気と共に私の前に置かれたのは、フライパンで炒めたカレーライス。電子レンジがなかった当時、他に温める方法がなかったのだろうが、見た瞬間に堰を切ったかのように涙が爆発した。
「ごめんなさい」
やっと謝って、手を付けたカレーチャーハンもどきは、この上なく美味しいご馳走だった。

辛かった後、我慢した後、思い切り泣いた後の一皿は、どうしてあんなに美味しいんだろう。当時は三ツ星レストランなんて知る由もなかったが、間違いなく深夜の素朴な一皿に軍配が上がったと思う。

飽食の時代、贅沢ばかり言っている舌をリセットしなくちゃいけないな。昨晩、山のように貰った大根の間引き菜が、今夜のメインディッシュになりそうだ。

コメント

  1. こまちゃん より:

    >贅沢ばかり言っている舌をリセットしなくちゃいけないな

    うぅっ、いつもの取れたてこそ、最高の贅沢ではないですかっ!!!
    今年は駿河湾の桜エビとシラスを食べられなかったorz

  2. yuris22 より:

    こまちゃん

    先日、釣り船に乗って体長70センチのワラサをゲットしました。しゃぶしゃぶにして食べたら美味しかった!・・って、贅沢すぎますよね。
    ちなみに生シラスは、さすがに飽きて最近食べていません・・って、バカヤローですよね。

  3. marie より:

    誰にでも「家庭の味」の思い出はありますよね?

    それが例え目玉焼きとウインナ-、卵焼きとかのように質素なものでも言える事だと思います。

    特に卵焼きは多分、家庭によって味とか作り方が微妙に違います。

    三ツ星レストランは超えませんが祖母が作ってくれた味噌汁と卵焼きは絶品でした。
    祖父の作る炒め物も本当においしかったです。
    あの味は一生忘れられません。

  4. yuris22 より:

    marie様

    私の場合、祖母が作ってくれた絶品は海苔巻でした。丁寧に煮込んだ椎茸と干ぴょう、卵焼き、でんぶ等々をご飯と一緒に巻いていく様子を、飽きもせずに眺めていたのを思い出します。もう二度と食べられない味だからこそ、記憶に残る美味しさが百倍なのかもしれません。

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