すきやばし次郎という江戸前劇場

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美食のためなら何処までも。ミシュラン三ツ星の「すきやばし次郎」を体験してきた。本来ならお鮨を食べてきたと書くべきだが、87歳で現役バリバリ、世界最高峰と言われる職人が握る江戸前の世界を体験したかったのだ。

「17時半の予約には絶対遅れないように来て下さい」と言われ、15分前に着いたら準備中。後からやってきた外国人の夫婦と一緒に開店を待つ。

KIMG4528
時間きっかりにカウンター席に通され、まずはビールを注文して喉を潤す。本日のおまかせという品書きに目を通し、「食べられないものはありますか」と聞かれたので、「全部好きです。宜しくお願いします!」と答えると目の前で次郎さんがニヤリ。今夜の1品目、「かれい」の握りが黒い塗り板の上に置かれる。「すみいか」「しまあじ」と進んだところで恐る恐る「写真を撮ってもいいですか」と聞いてみると、すんなりOK。しかもカメラを置くマットまで用意してくれた。

品書き品書き2
お客はカウンター席にカップルが3組。噂には聞いていたが握るテンポが早く、同じネタを端からそれぞれの塗り板に置いていく。周りのペースに遅れないようにすると、喋りながらチビチビお酒を飲んでる暇はないと悟った。食べることに専念しようと決めたとき、楽しみにしていたマグロ(「あかみ」「ちゅうとろ」「おおとろ」)が登場。どれも絶品で、次に酢のきいたピカピカの「こはだ」が出てきた時には、口に残った「おおとろ」の甘味とお別れすべきか悩みぬくほどである。

あかみちゅうとろ
おおとろこはだ
そしてこのとき小さな事件が勃発した。外国人客が「おおとろ」の上にガリを乗せて食べているのを次郎さんが発見。「ガリは刷毛だと言って来い」と若い衆に命令したが、刷毛は英語で何と言うのかが問題となった。「ブラシ、ブラシ」と身振り手振りで伝えて納得してもらえたのも不思議だが、鮨屋のガリの役目は、刷毛代わりにしてネタに醤油を塗るためというのは、あながち嘘ではなかったらしい。

トラブルは丸く収まって、次に「とりがい」「あじ」と進み、10品目の「くるまえび」は大ぶりで身がしっかり。頬張ると独特の風味がして「ミソが入ってる!」と喜んだら、また次郎さんがドヤ顔になる。さらにビックリしたのは海老のしっぽを醤油皿に置いたとたん、若い衆がさっと片付けるその素早さ。塗り板にご飯粒を落としたときも、瞬時に拭き取りにやってくるのである。

とりがいあじ
くるまえびカウンター
「あかがい」「しゃこ」「いわし」「はまぐり」「うに」と来て、「こばしら」を食べようとした時に写真を撮るのを忘れていたことにハッと気付いた。「みんな途中から忘れちゃうんだよな。ネタを口に入れたのを撮ればいいんだよ、ハハハ」と笑われて、「いくら」「あなご」「たまご」へと一気呵成に突っ走った。約40分でおまかせコースを終え、追加で「とりがい」を頼んだらもうお腹がパンパン。もしゆっくり食べていたら胃がいっぱいになって、おそらく全部食べることが出来なかったと思う。

あかがいいわし
はまぐりうに
こばしらいくら
あなごたまご

デザートはテーブル席に移動して冷えたメロンを戴いた。カウンター席では2順目のお客を迎える準備が始まっている。店の玄関先で見送ってくれる次郎さんに「ごちそうさまでした」を言って、かたじけなくもトイレの場所まで教えて貰った。

メロンすきやばし次郎
食べログの口コミを見ると賛否両論の「すきやばし次郎」だが、この店は鮨屋という名の劇場であり、マエストロ・小野次郎さんの技に感動する「江戸前コンサート」なのだと思う。次は魚が丸々と太って脂が乗った頃、秋になったらまた食べに来たいな。ニヤリと笑った顔がチャーミングな次郎さんに一目ぼれした銀座の夜であった。

コメント

  1. さくら より:

    以前は別なハンネだった気もするのですが・・・(^_^;)
    このお店、何年か前にNHKの番組で見て
    その時も既に結構なお年だったので、その後どうされてるのか気になってました。
    お鮨ももちろん美味しそうなんですが、
    たまごが美味しそうですね~(^w^)

  2. yuris22 より:

    さくら様

    たまごについては皆さん絶賛してますね。
    でも私としては???だったかな。甘くてフワフワで噛みごたえがなく、カステラに近いのです。
    昔ながらの堅めの卵焼きが好きだったので、このお品だけが外れでした。
    辛党の意見でございました。

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