ダメな自分を隠さずにいること

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日付が変わるころスマホが鳴った。懐かしい声は「フレーフレー!えびす様!」に書いたGさん。彼は身内のトラブルから逃げ、千葉の九十九里に家を建てて隠居したバツイチシングルだ。60歳は過ぎたのだろうか、超メタボで呑兵衛で照れ症で、淋しさが極まると私に電話をかけてくる。その時はたいてい酔っぱらって半泣き状態だ。
「ねえ、千葉に遊びにきてよ。ハマグリが美味しいよ。」
お誘いありがとう。でも逗子だってハマグリは美味しいけどねぇ。

Gさんは都内の一等地を売り払って、身内一族の揉め事からオサラバした。釣りをしたり畑を作ったり、悠々自適の九十九里ライフを楽しむつもりだったのが、夜になると人っ子一人通らない暗闇は想定外だったらしい。地元の姐さんたちが働くスナックの常連になったり、週末は東京での飲み仲間に遊びに来て貰ったり、はてまた財産の半分をあげて離婚した妻を呼び寄せたりと、私が訊ねずとも友人たちからGさん情報が入ってくる。

もしかして電話がきたのは1年ぶりかなあ。これまでになく「好き好き」攻撃の今夜。しかし声がシュンとしてトーンが低いし、それほど酔ってる感じがしない。もしかして元妻がまた出てったとか?
勘は的中し、貰いたいものを得た元妻は自分の仕事をしたいと日本海側の実家に戻ったらしい。そして今、Gさんの隣にいるのは都内の居酒屋での飲み仲間で、金銭的におんぶ抱っこの居候おやじだ。

Gさんは相変わらず涙声。
「僕はね、あなたに電話すると落ち着くんだよ。あなたには裏表がないからね。」
裏表という言葉に反応して、お人よし過ぎるGさんに「また騙されたの?」と聞いてしまった。しかし返事は的確すぎ。
「あなただって騙されてばかりじゃん。いい人なんだよね。だから好きなんだ。」
喜んでいいのか落ち込んでいいのか、Gさんって鋭いなと思った。

詐欺師に引っかかりやすい私はお人よしのお馬鹿さん。騙して下さった占い師やら婚約者やら、ブログには相手を信じ切っていた時のハイテンションを書き綴っているが、あえてそのみっともない記事は消さない。公開日記であるブログを他者に読んで戴きながら、私の人生のアップダウンを冷静に観察して、「みっともないわねぇ。自分は大丈夫」と安心して欲しいからである。裏表の立ち回り、すなわち嘘をつくのは不器用な私の心情には合わない。

7月から心理カウンセリングルームを始めることになった。訪ねて下さる方に対し、上から目線はしたくない。心の置き場に困っている方たちのために、みっともない自己開示をしてきた私のブログが役立って戴けるよう、恥ずかしい記事もこのまま残すことにする。

Gさんには励まししか言えなかったけれど、返ってくる声の雰囲気が変わった。
「騙すより騙されるほうがいいよね。あなたと僕は同類だよ、ありがとうね。」
僅かながらカウンセリングできたのかなあと、小さな自分が0.1ミリぐらい成長した気がする。

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