風が通る家に暮らす幸福

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この夏は冷房を使わない記録を更新している。5歳になった与六は仔猫だった頃と比べ、網戸を手で開けたり引っ掻いたりしなくなったので、全開にした窓を通じて部屋に涼しい風が吹くようになった。

朝から晩までパソコンに向かい続ける毎日は相変わらずだが、体感温度は去年よりもはるかに楽。椅子に座りすぎの腰痛を心配してくれるのか、日暮れ前には与六がニャンと呼びに来て、尻尾を振りつつベランダへ出ようよと誘導する。「ちょっとだけね」とお付き合いして見上げた空は・・・、言葉にならないほどダイナミックで美しい。

ジェット機が描いた飛行機雲が南から北の空へと渡り、白いラインがだんだんと太くなっていく。カメラアングルに試行錯誤しているうちに、今度はミニジェットらしい機体が現れて細めな飛行機雲を引っ張っていく。その周りの雲たちも刷毛でシュシュッとなぞったようなふんわり加減で、一足先に秋が来たみたいだ。

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現役の夏を探して海の方角を見れば3本並んだ椰子。一緒に背伸びのストレッチをして、潮の香りがする南風を胸いっぱい吸い込めるのはリゾートマンションに暮らしている特権だろう。最近は車で遠出することもなくなり、旅行と言えばボランティア団体で被災地を訪ねるだけで、すっかり出不精になってしまった。本当は仕事で都内に出向くのも面倒だけど、元気で過ごしていることを時々アピールしないと、「どこか悪いの?大丈夫?」なんていう安否確認メールが入ってしまう。

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とても元気です、ありがとう。
今日の原稿は上がりました、ありがとう。
これから夕食の支度です、ありがとう。
明日も良い天気、ありがとう。

天にも昇る幸福は巡ってこなくても、ありがとうをいっぱい言えるのは、小さな幸福が継続しているってことだ。小さな家族である与六のおかげで、寂しいという言葉を忘れてしまったこの頃。さてさて茹であがった枝豆をつまみながら、プロ野球でも観ることにしましょうか。楊柳のステテコ姿で涼しそうに寛いでいた祖父を思い出して、風が通る家にありがとうの逗子ライフである。

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