自分をさておき、人を美醜で判断してはいけない。しかしどう贔屓目に見てもルックスが宜しくない方が性格までも醜悪と判断されたとき、「一円玉ブス!」(これ以上崩せない)もしくは「猿人ブス!」(原人に進化する前のケモノ)と心の中で怒鳴ってしまう至らないワタシ。街角で電車で居酒屋で、その種に出会ってしまったときは目が離せなくなり、お嬢様学校に勤務する修身教師になってイラついてしまうのである。ああ、最も性格が悪いのは私だ。
友人に招かれて出かけたビーチパーティー。午後1時過ぎに到着するとBBQの第一戦は終わり、主催者たちは補給の買い物に出かけた様子である。この日のために取り寄せておいた赤ワイン2本をクーラーボックスに入れて周囲を観察していたところ、最も危ないと思えるベロベロに酔った見知らぬ女子が近寄ってきた。「酒くれ!」とクーラーボックスを開け、私がつい先ほど入れたばかりのワインボトルを開けようとするのである。
「ごめんなさい、これは主催者にお見せしてからね」と声をかけると、「2本あるのにいいじゃん!」と怒鳴られ、「しゃーないから自分が持ってきたのを飲むよ」と、スクリューキャップの白ワインを抱えて退散。あぐらをかいてマイボトルを飲みほした後、飲みかけの缶ビールを持ったまま爆睡している。ごめんなさいっ、その姿、教科書に載っていた北京原人を想像してしまった。
でもどこか懐かしいのはなぜ。70年代の学生フォークみたいなファッション。一重瞼にヘアスタイルは「おすべらかし」(平安時代のストレートヘア)。くるんとした丸い鼻から鼻提灯が出ているのは笑えるが、よく見るとメイクもせずに透き通った綺麗な肌をしている。黙ってれば無垢なカワイイ寝顔じゃないですか。日本人の原点じゃないですか。
もうちょっと痩せて明石家さんま的パーツを矯正して、ファッション上手になって、「オレ」じゃなく「ワタシ」と綺麗な言葉を話したら、頭のいい貴女がこれまで一生懸命勉強して身に着けたスキルも、小保方マジックみたいに100倍の注目度を得られるんだよ。STAP細胞の真偽はともかく、才色兼備で初心なタイプこそ文明人のアイドルになれるのである。
全員が注視するなか熱中症寸前で目覚め、それまで周りが水分補給をしたり足に水をかけたりとケアしてたことを一切知らない彼女は、「ビールだ!」とクーラーボックスに突進した。再開したBBQの焼き物を頬張って元気復活。自分の理想に合わない男たちを卑下しつつ、これから婚活を頑張ってスーパーエリートをゲットするぞと、お父さんの年齢に近い男性に豪語し始めたのは面白すぎた。
そうだね、頑張れがんばれ!その強気は恋愛ドラマのように男を制すかもしれない。また何かの縁で再会したときにはオレサマ的な「悪デレ」言葉を止めて、素のままのカワイイ貴女を見せてくれたら、隣にはきっと理想の彼氏がシャンパングラスを差し出して待っているだろう。キーンと冷えた泡のボトル栓を抜いてくれたとき、「ごちになりっす」じゃなく「いただきます」と言うんだよ。この夏のハッピーエンドを楽しみにしながら、逗子の恋愛ステージ本番が始まった。
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