恋を待つ心にも降る催花雨

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早く咲けと花を急き立てるように降る雨を「催花雨」と呼ぶそうだ。一日降り続いた静かな雨のおかげで、ベランダのプランターに水をやらずに済んだ朝、眠い瞼をこすりつつ家を出た。相変わらず書斎ごもりが続いて、昼夜逆転している眼には、久々の空がまぶしい。

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毎年ながら思うのは、お正月が終われば春のくるのが早いこと。一年の計が手付かずのうちに、すぐ夏が来て秋が来て、子どもの頃の4倍速ぐらいで時間が過ぎていく。

とはいえ終活をするにはまだ早いので、思いきって婚活を考えてみた。第二の人生も悪くない。
「まだ大丈夫かな?」と周りに聞けば、お世辞かどうかは別として、選り好みしなければイケるとの応援。どこに縁が転がってるかもしれないと思うと、お出かけの服選びにも気合いが入るというものだ。

でもねぇ、何だかねぇ。
都内へ向かう横須賀線の中、向かいのシートに座っている男性たちを眺めると、気が滅入る。
大股を開いて携帯で喋っている人。
息をするたびに鼻毛がチロチロ震える人。
ワイシャツのボタンがはち切れそうな脂肪を蓄えた人。
スマホをピコピコ鳴らしながらゲームに興じている人。
加齢臭だらけのステンカラーコートを着た人。

自分のことは三階の神棚に上げておいて、惚れたくなるような男性は見つからない。これを選り好みと言うんだなと苦笑いした。

そんな自分に対して、心の中に棲んでいる昔の私がささやく。
「好きになった人がタイプでしょ?」
「見た目じゃなくて中身でしょ?」

その通り! 過去の恋愛を振り返ると、ルックスに惹かれて付き合った人とはうまくいかず、ことごとく別れているのだ。曇った眼鏡を磨いて、人のハートを見なくちゃ。

幾つになろうが関係なく、新しいことを始めたくなる季節。私にも催花雨が降り注ぐ春である。

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