フラワー・ミステリー

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異変に気付いたのは6月のはじめ、バスから1人で降りた夕方だった。
小高い丘の上にある自宅に向かって、西日のさす坂道を上っていく。
いつもは人影まばらな住宅地のはずが、どこからともなく多くの息づかいを感じる。

誰? 人の気配は後ろに伸びる私の影だけ。
誰? 息づかいの主たちが風にそよいだ。

こんもりと茂った緑の葉の中から、ひょろひょろと長い首が何本も揺れている。
ぷっくり膨らんだ細長い頭は、天を突こうとするコブラのようだ。

アガパンサス1

いつの間に現れたの?
地球を侵略しにきた宇宙生物?

薄緑のつぼみから何が生まれるのか、その夜から戦々恐々の日々が始まった。
ある朝いきなり開花して、「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」の人食い植物・オードリーになるかもしれない。それも近隣に何百と生えているつぼみの数。オードリーズに足が生えて、住民を襲い生き血を吸うかもしれない。

それから一週間後。観察していたつぼみの一片がハラリと剥がれた。
キャーッ! 中を覗くとさらに無数のつぼみたちがぎっしりと詰まっている。初夏の日差しに育まれて、危険分子はしたたかに増殖していたのだ。

アガパンサス2
アガパンサス3
アガパンサス4

やがて迫り来る危機を避けて逃げ出すべきか、それとも見届けるべきか。
まあいい、せっかく終の棲家と決めた地なのだから、何が起きてもここに骨を沈めよう。
入梅が近づき恵みの雨を受けて、人間たちの興味を紫陽花に向けさせて、宇宙植物はますます内なる増殖を目論んでいく。

そしてまた一週間が過ぎた朝。のんきな私は欠伸をしながら、サンダルを突っかけゴミ出しに行った。
世界は陰から陽へと変わる。不気味なつぼみが、薄紫の花火に変わっていたのだ。
生まれてきたのは、君だったのね・・。
思いも寄らない自然のプレゼントに感謝。可憐な花をそっと手のひらで包んでキスをした。

アガパンサス5

説明:
アガパンサス、別名がAfrican lilyのユリ科 。日本名は紫君子蘭(むらさきくんしらん)。
Agapanthusの意味はagapaが「愛らしい」、anthosが「花」のギリシャ語。
花言葉は「恋の訪れ」。
私にも恋が訪れるかしら?(余談)

注:
このシリーズ、面白かったらまた続けますので、投票でご意見をお聞かせ下さいませ。

コメント

  1. たそがれ より:

    植物、動物の話は大好きです。
    シリーズ化賛成、虫もいいよ。

    日々の風雪に耐え、短い時間に一生懸命、誇らしく、それぞれの色、形、香りで命を凝縮している姿は、見る者に命の大切さ、はかなさをうったえているようでなんともいいですね・・・味わえると好感度UP

    ところで、先日のオヤジ達との飲み会の日記のコメが消滅しているように思いますが???

  2. yuris22 より:

    たそがれ様

    ガーデニングをしてみたくて、片瀬江ノ島の「寅さん」に相談したんですよ。
    「おうっ!俺が手伝ってやろう。トマトがいいか?ナスもいいぞ」って、ちょっと違う気がする・・(^_^;)
    イングリッシュガーデンを目指してるのに。

  3. リハル より:

    素敵なところにお住まいですね。
    日本海側に住む私にとっては、見たこともない植物が多く掲載されていましたので、今後も続けて下さい。特に、それを見て、ゆり子さんがどう掲載するのか興味津々です。

  4. yuris22 より:

    リハル様

    今日は散歩の途中にまた怪しい花を発見しました(笑)
    木立朝鮮朝顔(エンジェル・トランペット)という、うなだれて咲く花です。
    面白い筋書きを考えなくちゃ(^_^)

  5. たそがれ より:

    ゴウヤ もええでぇ~

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