時の流れと慣用句

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カフェの隣席から、眉をひそめた女性たちの会話が聞こえてきた。
「彼女は気の置けない人なのよ」
「そう、滅多なこと言えないわね」

あれれ、間違ってない?

『気の置けない』の意味は「気がねしなくていい、遠慮しなくいい」が正解なのに、「安心できない」の意味で使っている人が多い。
文化庁が9月に発表した平成18年度「国語に関する世論調査」では、『気が置けない』を逆の意味に捉えている人が全体の5割を超えていた。

『流れに棹さす』に至っては、「傾向に逆らって,勢いを失わせる行為をすること」を選んだ人が6割以上。本来の意味は「勢いのついたところへ更に助力が増すこと、物事が調子よく進むこと」である。

渋谷の街角調査で「流れに○○さす」のはめ込みクイズを行ったところ、返ってきた答えは・・「流れに油をさす」「流れに水をさす」「流れに爪をさす」「流れに日がさす」等々、造語だらけだった。
文化庁国語科の担当官によれば、今の若い人たちは理解語彙(授業で知っただけ)と使用語彙(自分の言葉で使える)が、3:1の割合で頭を占めていると言う。

しかし言葉の乱れを責める前に、彼らの発想力には感心した。
古い文学作品に出てくる慣用句は意味を知らないと先に進めないが、自ら作品を書く側になれば、埃をかぶった慣用句は時代にそぐわない。
むしろ意外な言葉の組み合わせからニュアンスを感じ取ってもらう方が、文章が生き生きしてくると思うのだ。
(事実、そうしていかなければ作詞家なんて陳腐に埋もれて喰っていけない。)

『気の置けない』や『流れに棹さす』だって、きっと「昔の若い人」が作った造語。
これからは携帯メールで打ちやすい若者言葉や略語が、使用語彙としての慣用句になっていくかもしれない。

ちなみに10年ぶりに改定される『広辞苑第6版』(2008年1月発行予定)には、若者たちが使う新造語(『いけ面』『うざい』『自己中』『ラブラブ』など)を含めて1万語の単語が追加されるという。

ふむふむ、『どんだけ~』が入るのは次々回の改定になるのかな?

コメント

  1. tsune2 より:

    これからの歌詞は、同じ言葉の解釈の違いで
    正反対の歌になるんでしょうかね?
    歌詞が同じなのに演歌になったり、ラップになったり、
    でも主張している意味が逆。
    演歌歌手と、ラップのグループ。
    そして聞くユーザー層、年齢も違う。
    そうすれば2倍の印税が入りますね。
    いい時代ですね。

  2. yuris22 より:

    tsune2様

    >歌詞が同じなのに演歌になったり、ラップになったり、

    むむむ、それは少々難しいかも。
    演歌は基本的に1音符に1文字ですし、ラップの場合は文字数制限を
    考えずに1小節に1センテンス乗せちゃったりもします。

    曲が同じなのに歌詞が違うという、作曲家がおいしい思いをするのは
    ありかもしれませんね。

  3. 髪結いの亭主 より:

    「慣用」って「使い慣れた」という意味かね。
    すると、人、時代、地方によっていろいろあっていいじゃないかと思うなぁ。

    (ワッシノ慣用的コメではないっすか!)

  4. こまちゃん より:

    広辞苑って皆が有り難がるけど、
    間違いも相当あるらしいですよね。
    間違いを指摘している本が存在するようで。

    あっ、そんな本が存在する位有り難いんだw

  5. yuris22 より:

    髪結いの亭主様

    そうですよね。
    慣用ですから時代と共に変わっていくものでしょう。
    もちろん伝統には敬意を表しながら・・。

  6. yuris22 より:

    こまちゃん

    最近は辞書を引く機会が少なくなりました。
    たいていネット検索で済ませてしまいます。

    ・・が、広辞苑より更に間違った解釈が沢山あるため、正解に行きつく
    まで時間がかかります。
    便利なようで不便な世の中です。

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