それぞれのエバーグリーン

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ゴルフの打ちっ放しで一汗かいた後の生ビール。暑い暑いが口癖になった友人が、上気した顔をタオルで拭きながら言った。
「今年は11月まで半袖でいけるよ」

カレンダーはあと1日で秋のページへ。8月から9月に変わった途端、一気に老けたように感じるのが毎年の常だった。夏は短い尻尾に、掻き集めた若さを連ねて飛び去っていくほうき星だ。今年はどんな思い出を作ったのだろうと焦る心。

でも今回の夏は長っ尻。空に居座ったままの高気圧が「中途半端は止めて、今を燃焼し尽くしなさい」とでも言うように、現役でいられる猶予期間を延ばしてくれる。半袖でいられる間に、やり残したことを形にしなくちゃと、煌めく時間のカウントダウンを胸に聴いている。

 「それぞれのエバーグリーン」

遠い北の町から 届いた転居通知
近況すら書かない 無愛想がお前らしい
売れもしないギターを 掻き鳴らした仲間さ
あれからもう幾つの 夏が過ぎただろう

時の埃にまみれて 若さは引き出しの奥に
青春は巻き戻せない よれたカセットテープ
夢だけじゃ喰えなくて 背中を向けたけれど
心のなか生きている それぞれのエバーグリーン

恋はいつも短く 仕事も変わってばかり
正直なんだと笑って 空財布で酒を飲む
相変わらずお前は 少年の瞳をして
どこかにある真実 探しているだろう

俺は家族4人で 今でも東京の片すみ
しあわせのようなものを 何とか続けている
間違っちゃいないよと お前はきっと言うだろう
ささやかな愛ひとつ 守っていく人生

夢だけじゃ喰えなくて 背中を向けたけれど
心のなか生きている それぞれのエバーグリーン

Copyright by Yuriko Oda

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