旅先での自由時間は、地元の人たちの暮らしを見て歩くのが好きだ。
物干し竿に下がった大小の洗濯物、半開きの玄関からは魚を焼く匂い、垣根越しに世間話をするおばちゃんたち・・。裏道に迷い込むほど足を止める回数が増える。
屋久島の安房(あんぼう)は、水中翼船トッピーが発着する海の玄関口。トビウオ漁が盛んな港町だ。集落の真ん中を流れる安房川に沿って歩き始めると、陽気な暮らしぶりが目に飛び込んでくる。
「ごみをすてるな」の立て札の下には、ちゃっかり誰かが置いたゴミ。朝5時半から深夜1時半まで営業しても「火の車」な店。大音量で演歌を流しながら巡回する「走る魚屋さん」。
4月の初旬なのにツツジは満開。川べりの猫たちも並んだ消防車たちも、安穏でございますとばかりに動かない。
喫茶店の看板を見つけて入ってみれば、近所の市場から野菜を積んだ車が到着。ずんぐり太った大根と屋久島産のヤマイモが、段ボール箱ごと降ろされた。町の青年団とおぼしきお兄さんが立ち話に応じてくれる。
ガジュマルの木陰、海に向いたテラスで、自称・姓名判断の達人というお爺さんと同席した。「ワシは屋久島の赤ん坊140人に名前を付けたんだ」と話し出したら止まらない。
私の名前の総画数に人生のアドバイスを頂きながら、カフェオレの午後を過ごす。
ティータイムが終わると、安房港では堤防釣りのベストタイム。
サビキとコマセカゴの仕掛けで、サバやムロアジを狙う釣り人たちが集まっている。
釣竿がしなってリールを巻くと、透き通った海面に獲物が見えてきた。手につかんだらポキッと首を折るのは、血を抜いて鮮度を保つためだという。
こちらも頑張るぞと挑戦してみたものの、結果はみごと「坊主」に終わった。
(ちなみに「坊主」は一匹も釣れないことを言う釣り用語なのだが、いったいどうして? 調べてみれば「「釣れる気配がない」=「毛がない」から坊主だとか、「殺生をしていない」から坊主という理由のようだ。)
夕暮れが迫った安房川のほとり。釣り糸を垂れているお爺さんに出会った。
目が不自由でありながら、大きなボラを釣りに毎日やって来ているらしい。「ボラは旨いよ」とクーラーボックスに入った今日の獲物を見せてくれた。
「晩御飯のおかずですね?」と尋ねれば「いいや、猫のエサだよ」に大笑い。出掛けに見かけた猫たちが、丸々と太っている訳が理解できた。
人間も動物もみんなが名前を持っている、顔見知り同士で生活しているんだな。
ガイドブックには載っていない人情に触れると、次に訪れた時には「ただいま」の挨拶をする旅になる。
コメント
小坪ですか♪
私は鎌倉です♪
坊主の意味愛がおもしろかったです♪
また遊びに喜増す(きます)♪
幸せまん様
いらっしゃいませ(^-^)
ご近所さんなのですね。どこかですれ違っているかも。
陽気な湘南人同士、幸せを広げていきましょうね。
「火の車」「消防車」「トトロみたいな猫」
「聞いてみたい姓名判断(特に管理様の結果)」「鯵のなぞのえさ」・・・
好奇心と乾いた心を満たしそうな やくしまぁ~ ぁ~ン!
住み心地はどうですか(まぁ神様任せだけどね)?
素浪人様
雨が嫌いでなければ、屋久島の住み心地は最高だと思います。
家賃は安いし温泉は豊富だし、外気はマイナスイオンに満ちてるし、何より人情に厚い。
ちなみに姓名判断の結果はニコニコ。
鯵のなぞのえさは、アミエビのコマセです。