清き一票と赤い山茶花

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コートを着ていると汗ばんでしまうほど暖かな日曜日。ランチのあと近くの小学校まで投票に出かけた。掲示板に貼られたポスターは4枚。その顔をじっくり確認するでもなく、住民たちは無口に校舎へ入っていく。

小坪小学校
投票所
小選挙区、比例代表、最高裁判所裁判官と3枚の用紙を投票箱に入れ、教室を出ると清々しい気分。ニュースによれば投票率が2009年に比べ大幅にダウンしているそうだが、麗らかな晴天が有権者の足を行楽地へ向けさせてしまったのだろうか。

山茶花
帰り道に真っ赤な山茶花が目にとまりデジカメを取り出す。懐かしく思い出したのは七里ヶ浜にあった祖父母の家で、山茶花と椿が庭の至るところに咲き、凛とした冬の空気に赤・白・ピンクが際立っていた。丘の頂上にあった家から投票所までは20分も坂道を下らなくてはならなかったが、二人とも午前7時の投票開始に一番乗り。まるで年始の挨拶にでも行くように精いっぱいめかしこんで出かけたものだった。

10年ほど前に売却してしまったその家はどうなったのか、車で30分の距離なのに見に行く勇気がない。つげの生垣や歌舞伎門、ひょうたん型の池、毎年たくさんの実がなった梅やスモモの木、もちろん山茶花や椿たちも、すべてが消えてしまったのを見るのが辛いからだ。もし私がお金持ちなら維持して祖父母の心を住まわせてあげることが出来たのにと、解消なしの自分が情けない。

家に戻って選挙公報に書かれたマニフェストをもう一度読んでみた。夢みたいな約束は並んでいても「どうやって」の具体的な方法論が書かれていない。祖父母が投票に行った時代は、少なくともこんな張り子の虎みたいな候補者たちじゃなかった気がする。誰を選べば国民の暮らしは本当に豊かになるのか、日本にはもう次がないギリギリの選挙。バブル崩壊後に失ったものは多すぎて、日本そのものが思い出の故郷になってしまった気がしている。

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