一期一会を教えてくれる秋の七草

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長く降り続いた雨が上がり、やっと晴れ間が見えた9月最後の日曜日。富士山麓に用事がある友人のお供をして、秋のドライブに出かけた。海と山の行楽に繰り出した人たちで、逗子からの行きも帰りも大渋滞。眠気と戦うドライバーには申し訳ないけれど、のんびりと景色を眺める助手席のメリットを堪能させて頂いた。

富士・箱根方面で、私が最も好きな季節はちょうど今ごろ。銀色になったススキの穂が「面」となって風に波打つ姿は、深まる秋の郷愁を絵に描いたように美しい。眼下に光る本栖湖の上には、刻々と変化する雲の群れが、パズルの隙間から青空をのぞかせて行き過ぎていく。

motosuko
「ハギ キキョウ クズ フジバカマ オミナエシ オバナ ナデシコ」。ススキを見かけると、おまじないのように唱えるのが、祖母から習った秋の七草だ。子どもの頃はどれが何の花だか分からなかったが、実物を見て一つひとつ覚えていくたびに、おまじないは季節の宝物になった。

山上憶良が万葉集に残した秋の七種(ななくさ)の歌は、2首をもってワンセット。
「 秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花 」
「 萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝顔の花 」(朝顔は桔梗のこと)

春の七草に比べると、どれも色が寂しげで儚くて、ひたひたと近づいてくる冬の忍び足を感じさせる。官人でありながら、貧しい者や病める者など弱者への愛を歌にした山上憶良は、画家のように繊細な目を持っていたのだと思う。

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軽い疲れと共に目覚めた今朝も晴れ。天気予報では暑さがぶり返すと言いながら、日差しは弱くて穏やかだ。郵便を出しにいくコースをいつもと変えて、萩の花がひっそりと咲いている秘密の場所を通ってみた。

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良かった、まだ咲いていた。歳を重ねるたびに、一期一会がいかに大切であるかが身に染みる。人はもちろんのこと、野にひっそりと咲く植物にも、今日の出会いを感謝したい秋である。

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