水と緑と共生する文明

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長く乾燥した冬が続いた後で、3月の雨は植物たちにとって命のしずくだ。「生き返ったよ~」とでも言わんばかりに、樹木も花も雑草もツヤツヤと濡れて、天の恩恵を受けている。コンクリートとガラスの東京から逗子に帰ってくると、私も植物の仲間入りをさせてもらう。

雨と樹木
古代より文明は水と緑の豊富な場所で栄えたはずなのに、現在の都市は海を埋め立て、緑を伐採して栄えている。樹木が茂っていた鎮守の森は住宅地に姿を変え、先祖が守ってきた土地は相続のたびに細分化されて、マッチ箱みたいな家が密集する。

「あと300年たてば、東京は無くなると思います」と語ったのは、イオングループ名誉会長の岡田卓也氏。21世紀は「環境の世紀」だと強く思い、1990年にイオン環境財団を設立して、世界中に樹を植える運動を繰り広げている。

北京では万里の長城付近に100万本の植樹。最初は蒙古ナラを3万本の予定だったのが、ドングリから育てた苗を1本55円で買うと申し出たら、中国政府は70万本へと変更。失業者の救済に使うという意向だった。日中のボランティアが参加して、1998年から今までに100万本を植えてきたそうだが、まだまだ足りず、政府は万里の長城を埋め尽くす1億本を目指しているという。

環境財団が世界に植えてきた樹木はこれまでに1,000万本。タイ、マレーシア、ラオス、カンボジア、ベトナム、日本では北海道、佐渡、愛知県知多市、山形県南陽市、長崎県南塩原郡、三宅島・・、現在も多いところでは1,000名規模のボランティアを募集しながら、各地への植樹ツアーを組んでいる。

75歳で会社の全ての役職を退いた岡田氏は、現在85歳。企業を成長させることより、財団の資金の使い方を考える方がはるかに難しいと、日に焼けた若々しい顔で語っていた。

かつては日本も東海道には松並木が続き、川の堤防には桜並木が続いていた。しかし今は堤防に樹を植えることは禁止。草がぼうぼうに生えている外側にさえ植えられず、♪春のうららの隅田川♪の時代は遠くなった。

スカイツリーは電波塔として世界一の高さになったけれど、展望台から見おろす景色は何が世界一になるのだろうか。人工的な街並み?それとも水と緑? いかにイルミネーションが燦然と輝こうと、自然を支配して造られた文明が美しいとは思えずにいる。

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