獣医に学ぶ人間の医者

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彼と離れていると、恋しくて恋しくてたまらない。私を見つめる瞳を思い浮かべるたびに、早くこの手に抱きしめたいと帰りを急ぐ。玄関で待っていてくれた分には、身体中にキスの雨を降らしてしまう。うわーん、ニャンコ大好きっ!!!

甘える与六

近ごろ与六は甘えてくると、喉をゴロゴロではなくて鼻をブーブー鳴らす。しかも身体を大きく膨らませて息が荒い。もしや呼吸器系の疾患では?と心配になり、車に乗せて動物病院に連れて行った。

 

春になれば桜並木がアーチを作る住宅街。若い獣医さん夫婦がニコニコと迎えてくれるその病院は、こじんまりとして小奇麗で温かい。問診票に記入して診察室に入り、与六をバスケットから出すと、二人して真っ先に口から出た言葉は「うわー、カワイイ顔してる!!」「顔と目がまん丸ですねぇ」だった。
マンチカンを診るのは初めてと興味津々で、「どこでこの子に出会ったんですか?」「なんでこの子を飼おうと決めたんですか?」と、病気以外の質問が次々に飛んでくる。

 

その間の与六といえば自分が誉められているのを分ったのか、ご自慢のシマシマ尻尾をピンと立てて、診察台の上をモデル歩き。車に揺られていた間、ミューミューと鳴き続けていたビビリは何処へやらである。
モミモミの触診をし、聴診器を当てて調べた結果は特に問題なし。鼻ブーブーは嬉しさが極まった表現なのでしょうと、「ご主人を大好きすぎる病」の診断が下った。みんなで頭を撫でてヨカッタねーっ。もちろん治療の必要なしで、なんて患者にも飼い主にも優しい先生たちなんだろうと嬉しくなった。

 

考えてみるにワンコやニャンコだけでなく、人間だって同じじゃないだろうか。待合室で延々と待たされ、蛍光灯の診察室に入って丸椅子に座ると、忙しそうにカルテにペンを走らせている先生がいる。何の前置きもなく「どうなさいましたか?」と聞かれて、「近ごろ私、鼻息が荒いんです」なんてふざけた症状を言えるだろうか。

 

人材不足、過重労働、経営難・・、人間相手のお医者さんたちには余裕がない。でもねえ、患者を身体や臓器としてではなく、心の持ち主として付き合っては戴けないのだろうか。誉められてモンローウォークしたニャンコのように、お医者さんの笑顔ひとつで元気が身体にみなぎる事だってあるのだ。腰が曲がり皺だらけのお婆さんに対してでも、「えっ、このお齢は本当ですか?ずいぶんお若く見えますねー」と言っただけで、帰り道は杖が要らなくなるかもしれない。

 

で、結論。人の命に関わる職業なら眉間に皺の深刻面は止めましょう。えっ、葬儀屋さんはどうなんだって? うーん、それは映画「おくりびと」を見れば、ジンワリと人の心が分るかもしれません。

コメント

  1. エルエルバンビ より:

    私はですね…

    医療系の仕事を少しかじったことがありました。

    難しいですね…
    私の感じ方では医療系の仕事は、悲しいです。

    学校ではもちろん患者さんの気持ちを考えて!とかそういう視点でしか勉強しないのですが…

    実際現場は忙しく慌ただしく、

    そして、何よりも患者さんの死に慣れなくては自分がもたなくなってしまいます。
    学校で勉強したこととまったく逆の考え方に自分を追い込んでいくんです。何度も何度も悲しみと自分の無力さに涙しながら…

    あっちょっと話が重たいですね…すみません。

    ただ、もちろん患者さんとの暖かいやりとりもあるわけで…だから続けていけるのでしょうね。

    まぁ私はやめてしまいましたが…

  2. yuris22 より:

    エルエルバンビ様

    >そして、何よりも患者さんの死に慣れなくては自分がもたなくなってしまいます。

    患者サイドの私たちには見えない、自分との厳しい戦いがあるのですね。お医者さんも看護師さんも、人生に踏み込みすぎず、静かに対応している理由が分かるような気がします。ご自分の心身を酷使して、人の命を支えて下さることにもっと感謝しなくては!ですね。

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